
20試合で16得点。町田のエースとして前線に君臨する鈴木考(左)
“急がば回れ”を地で行く序盤戦
12年はJ2最下位、13年はJFL4位??。悔しい2年を経て、ようやく町田に光が見えてきた。
J2復帰を至上命題として、どこか焦りのあった昨季から一転。町田は「J2から簡単に落ちないチーム作り」を合言葉に、じっくり基礎に手間を掛ける姿勢で再スタートを切った。とはいえ期限付き移籍組とブラジル人選手がクラブを去り、補強は大卒新人とJ2下位クラブ出身者が中心。10年に町田を躍進させた相馬直樹監督の復帰は明るい材料だったが、昨季のJFL王者・長野を上回るのは難しいだろうというのが、大方の予想だった。
しかしチームは始動後最初の練習試合でJ1・甲府に勝利。新潟、FC東京など格上との対戦もあったが、開幕までの練習試合を10戦全勝で乗り越える。その後も勢いは止まらず、J3第20節を終えて長野と勝ち点7差の首位に立っている。時間がかかることを覚悟して地道な取り組みを始めたら、逆にすぐ結果が出た。“急がば回れ”を地で行く前半戦だった。
相手をリスペクトしつつも“自分たちのサッカー”にこだわるのが今季の町田。守備は全員が連動した、前線から相手を追うハードなプレスが特長だ。誰かが足を緩めて、動きのタイミングが狂うと、機能し難くなるもろさはある。実際に天皇杯東京都予選は“守備の司令塔”であるリ・ハンジェ主将を欠くと、明治大に0-3で敗れた。とはいえハードワークが裏目に出かねない夏場も、チームはまったく減速していない。
20試合16得点。鈴木孝司、脅威の得点力
攻撃面で大きいのはエース鈴木孝司の存在だ。法政大から加入した12年は、J2・18試合に出場して無得点。周りを生かす動きは出色だったが、いかんせんゴールと縁がなかった。ポストに当ててばかりの“持ってない”ストライカーだった。ただ、どんな試合でも動じないマイペースぶりと、「なぜそのプレーをしたか」を明晰に語るクレバーさは新人時代からあった。
そんな鈴木孝が昨季はJFLで15ゴールを挙げ、今季は早くも16ゴールと得点王争いを快走。「『ガタイが良くなった』とみんなに言われる」と本人も語るように、体重が登録の71kgから「4kgくらい増えている」(鈴木孝)。体と判断がバージョンアップしたことで、自らが思い描くプレーを具現化できるようになった。
彼は両足、頭と得点パターンも多彩。加えて得点以外の貢献が大きく、狭いスペースでもしっかりボールを動かせることは強みといっていい。シュート、キープ、ワンタッチとすべてが強みで、自分が封じられていたら決定的なパスも出せる。近い距離感に人を掛けて攻める“町田スタイル”のショートカウンターだが、彼は使われる側、使う側の両面で生きている。
町田が優勝、自動昇格に向けて残すのはあと13節。今週末は、昨季をJ2で戦っていた4位・鳥取と対する。7月から加入したフェルナンジーニョは3試合5得点と猛威を振るい、チームも浮上の兆しを見せている。さまざまな障害をクリアし、1敗でシーズンを走っている町田だが、今週末の大一番はかなり高い“山”になりそうだ。(大島 和人)