安堵の笑みはあっても、満足の笑みはない。「ダメでしょ」。それが川又の、自己採点だった。
29分、中央への折り返しに反応した川又は、相手ともつれながらネットを揺らす。名古屋移籍後初ゴールは、チームの苦境を救う貴重な同点ゴールだった。
「相当ゴールに飢えている」。そう言って名古屋に加入した男にとって、公式戦4カ月ぶりの得点である。さらに言えば、川又は8月28日の紅白戦でケネディが負傷するまでは、MFで出場するはずだった。2トップの玉田とプレーしたのもわずか5分ほど。“ぶっつけ本番”での一発回答に、西野監督も「名古屋に来て初めてのセンターFWでいきなり得点したというのは、さすがストライカーだなと」と称賛を惜しまなかった。
それでも満足の笑みはない。「勝ちたくてしょうがなかった」、「最後に足をつっているようじゃ全然ダメ」。点を取って、チームを勝たせるのが使命。自身の存在意義をそう捉えているから「ミスも多かったし、ボールも足につかなかった。それをゴールで帳消しにしたぐらい」と、自己評価はどこまでも厳しい。
ただ一つ、安堵の笑みはあった。
「俺の初ゴールはここ。それに新潟で試合に出られていなかったときの悔しさとか、試合前にいろいろな気持ちが湧いて。それを見せ付けたかったし、瑞穂(陸上競技場)ではゴールでスタートしたかった」
満足できる90分でもなかった。ただ、水物と呼ばれるゴールを生んだのは紛れもなくFWとしての気迫。「まずはゴールを決めて認めてもらわないといけなかった」。ゴールに生きる彼のそんな姿勢は、瑞穂陸に集まった誰もが目撃している。(村本 裕太)