
前田に「イジってもいいですか?」と聞いた吉本、そして河野
訪れた約1,200人のサポーターの前でも、数台が並んだTVカメラの前でも、時計の針が正確に刻まれるように、淡々と言葉を吐き出していく。過去何度も、冷静にゴールを射抜く決定力を前に背筋を冷たくしてきた。感嘆の声とともに吐き出した、ため息は一度や二度ではない。
その前田遼一が、胸元にTマークのエンブレムが入った真新しい練習着に袖を通し、小平のピッチを走っていた。
プロ16年目にして初の移籍となる。慣れ親しんだサックスブルーに別れを告げ、「さらに成長したい」という思いに従った。
自身2年ぶりのJ1の舞台となるが、マッシモ・フィッカデンティ監督は、「いつも彼がやってきたことをやってほしい」と全幅の信頼を寄せている。と同時に恒常的な決定力不足の解消を一人に背負わせるつもりはないとも言う。
ただし、年齢を重ね、円熟味の増した男に期待が集まっているのも事実だ。その万能性はいまさら説明の言葉を必要としないだろう。個性的なFC東京の前線にフィットすれば、攻撃パターンも充実するに違いない。“時計仕掛け”のスコアラーは、「具体的な数字は設けないが、得点を取りたい」とリズムを刻む。
前田は、中高時代の6年間を過ごした東京での活躍を誓った。「成長するため、タイトルを獲るためにここに来た。全試合に出場してタイトル獲得に貢献したい」。そう吐き出した所信表明に、抑揚を忍ばせた。