劣勢をモノにする力。首位たるゆえん
山口の上野監督は「収穫は勝ったことだけ」と話したが、山口にとってその収穫は何にも代えがたいモノだ。発展途上にあるチームが勝利から得るパワーは直接的に順位へと反映されている。
ゲームの主導権を握ったのは“J3の先輩”であるYS横浜だった。昨季から継続的に取り組んできた守備において、「プレッシャーのラインを一つ下げて、相手のボランチを自由にさせないようなプレスに変えた」(高橋)ことが要因だ。リーグトップの得点力を誇る山口に自由を与えず、“良い守備から良い攻撃”という理想的なゲーム運び。これまでかみ合わなかったサイド攻撃でも、SBが絡むような連動性の高いコンビネーションからチャンスを創出した。首位をひた走る新参者に対しても力が劣らないことを証明し、時計の針が進んでいくにつれて、サポーターの期待感も高まっていった。
劣勢の山口に訪れた決定機は、59分のセットプレーのみ。それでもいまの山口はこれをモノにする勢いがある。ペナルティーエリア内のこぼれ球を宮城がボレーで豪快にゴールへ突き刺した。山口はリードを奪ったあともペースをつかめず、さらには退場者を出す苦しい展開となったが、最後までフィニッシュの精度を欠いた相手にも助けられ、虎の子の1点を守り切って勝利をつかんだ。前節・琉球戦(4◯3)に続いて苦しいゲームをモノにしている事実こそが、首位に立っている何よりの理由だろう。
山口の好調を支える攻撃陣の手綱を握るのはボランチの庄司だ。ピッチの至るところに顔を出し、小気味良いテンポでゲームを作る。「攻撃に自信はある」(庄司)というチームの強みを引き出しているのは、今季より町田から加入した44番にほかならない。この日はYS横浜に庄司を“消された”ことで前線への配球源が断たれ、完全にリズムを失ってしまった。今後はさらに対策が進み、思いどおりにいかない試合も増えるだろう。そんな苦しいとき、積み上げてきた勝利に基づく自信がよりどころになるはずだ。(安藤 航平)