失礼を承知で言えば、誰が予想していただろうか。仙台でも絶対的レギュラーでなかった武藤は、今季の加入の“目玉”として扱われていたわけではなかった。それがいま、新加入組で最も活躍しているどころか、チーム屈指の活躍を見せている。
序盤5試合は出場4試合のうち先発1試合だったが、1st第6節からは7試合連続先発出場。得点は決して多くはないが、関根と並んでチームトップタイの4ゴール。仙台時代に4年間で決めたリーグ通算6得点に早くも迫っている。
ゴールという結果ももちろんだが、武藤の浦和における存在の大きさはそれだけではない。鳥栖戦に向けた27日の練習でペトロヴィッチ監督は、相手DFが付きにくいポジション取りを前線に求めたが、その翌日、これを忠実かつ効果的に実行していたのが武藤だった。「相手がイヤがるところにポジションを取り続けることは(自分の)良い部分。それを出せているからこそ試合に出られている」と自負している。試合でもスペースにポジションを取り、ボールを呼び込んで攻撃を活性化。誰が出ても同じサッカーができることを標榜する浦和ではあるが、いまは武藤なくして前線のコンビネーションは機能しないと言っても過言ではない。
そして当然、今季から加入しただけに、過去の鳥栖戦での苦い記憶を知らない。仙台時代も鳥栖に勝利していないが、浦和のそれとはまた異なるモノ。「僕からしたら終盤の失速も経験していないし、鳥栖は鬼門でもなんでもない」とさらっと言いのける。そして「じゃあ俺がやってやるよ、という気持ちでいる」と実に頼もしい。それは決して大口ではなく、自信の表れであり、状態が良い証拠。もし浦和がJ1で初めてアウェイの地で鳥栖に勝利するならば、その中心に武藤がいても何ら不思議ではない。( 菊地 正典)
武藤 雄樹(むとう・ゆうき)
1988年11月7日生まれ、26歳。神奈川県出身。170cm/68kg。FCシリウス→FC湘南JY→武相高→流通経済大→仙台を経て今季、浦和に加入。今季ここまでJ1リーグ戦11試合に出場し4得点。J1通算81試合出場10