始動以降、今季の基本システムは[4-3-3]で一貫しており、山口、扇原、長谷川の中盤3枚が軸だった。ピッチを幅広く使いながらパスコースを確保する。長谷川と扇原は攻撃に顔を出し、アンカーの山口が守備でリスク管理をしつつ、サイドチェンジや裏へのボールで変化を付ける。「正直、やっとあのシステム(4-3-3)に慣れてきたところだった」(扇原)と体に染み付いてきた矢先、攻守に気が利き戦える長谷川の移籍が発表された。
ピッチ外での存在感も大きかった長谷川は、昨季後半、フォルランが孤立しかけたときも、率先してコミュニケーションを取った。今季も、得点から遠ざかるパブロを扇原とともにブラジル料理店へ誘い、ざっくばらんに語り合い、気持ちを紛らわせた。国籍を超えて共有し合えた空間に、「とても良い時間だった」とパブロが笑顔で話していた姿が印象的だった。契約上、移籍金も入らない今回の移籍は、短期的な視野に立てば、C大阪にプラスはない。しかし、シーズン途中で離れる決断を下した長谷川を責める気持ちは湧いてこない。昨季のJ1残留争いの渦中、彼は一貫して話していた。「目の前の試合、ワンプレー、ワンプレーを必死にやるだけ。いまをしっかりやることが未来につながる」と。苦しい中で懸命に戦うその姿が見る者の胸を打ったからこそ、1年半という短い期間ながら、彼はC大阪サポーターに愛された。そして、スペインリーグでプレーする権利をつかみ取った。
恩師であるランコ・ポポヴィッチ監督の影響も大きかったとはいえ、欧州移籍は彼の努力と信念の賜物だ。今季最後までともに戦いたかった心残りはあるが、幼いころからの夢であった欧州挑戦にエールを送りたい。(小田 尚史)