栗山が最初の悲劇に見舞われたのは専修大時代の12年夏だった。試合中に左ひざ十字じん帯を断裂。プレーができない状態だった栗山だが、13年の新加入選手として千葉に迎え入れられた。その後は懸命のリハビリで回復すると、昨季途中からJ3の町田に期限付き移籍。しかし、ここで栗山を再び悲劇が襲う。9月上旬の練習中に右ひざ十字じん帯を損傷。再びピッチから離れることを余儀なくされた。「トータルで1年半以上もけがでサッカーをしていなかったので、もどかしかった」と本人が話すように、この1年半はサッカー選手として本当に苦しい時期を過ごした。それでも栗山は復帰をあきらめるめることはなかった。「真面目な選手なので、トレーニングも必死にやるし、どんなときでも腐らず、文句も言わずにやっている。そういうところを関さん(関塚監督)やコーチングスタッフは見ていたのだと思う」と佐藤勇。苦しさや辛さといったモノから逃げなかったことが、この試合のプロ初出場初先発という機会につながった。
「3年ぶりの公式戦だったが、思ったより緊張はしなかった」というが、失点のシーンでマークを外してしまいプロの洗礼を浴びた。それでも、大学の一つ上の先輩である町田がリーグ戦初ゴールを決め、助けてくれた。その後は最後まであきらめることなく、懸命にプレー。「FWに目がけて蹴ってくるボールは入れさせないように激しい守備をしたい」と試合前に話していたように、自分の持ち味を存分に発揮した。「試合に使っていただいたスタッフと医療スタッフ、そして両親に感謝を伝えたい」と話す栗山にとって、この試合が本当の意味でのプロサッカー選手としてのスタートだ。不屈の男はさまざまな人々の想いを胸に、これからもピッチを走り続ける。(松尾 祐希)