練習は嘘を付かない。使い古された表現だが、追い詰められた状況でこそ、その言葉は重みを持って響いてくる。23分の時点で2点のビハインドを背負い、主将・菊地は負傷交代。絵に描いたような逆境にあって、大宮は何か特別なことをしたわけではない。あくまで練習から取り組んできたことを発揮することに集中した先に、逆転という結果が待っていた。
渋谷監督は試合後、「普段からの練習で言っていることを選手たちがやってくれた」とチームを称えた。和田がプロ初得点となる決勝点を挙げたシーンは象徴的だ。泉澤がサイドでボールを持つと、和田は家長へのパスを予見して、二人の間を割るような3人目の動きでペナルティーエリア内に侵入していった。「ああいうタイミングでの3人目(の動き)はマークに付きづらいと思うし、(泉澤)仁が(家長へ)マイナスに出すと思ったときのイメージどおりに入っていけた」(和田)。“距離感”と“3人目の動き”は大宮の攻撃練習において特に重視されるところ。ボールに関わる二人とは近過ぎず遠過ぎずの距離感を保ちながら、相手の視野の外から3人目の動きで抜け出す。あと1点が欲しいという極限の状況で、良い意味でいつもどおりのプレーが得点につながった。
先に2点を失い、冷静さを失ってもおかしくない中で、第20節・東京V戦(0●2)の敗戦が教訓になっている。横谷は言う。「東京V戦での0-2の反省を生かして、3点を取り返したのはすごいこと」。それを成し得たのも、チームに立ち返る場所があるから。積み上げの堅実さを実感する逆転勝利だった。(片村 光博)