中村の同点ゴールはインパクト大だった。ゴールのクオリティーもさることながら、決めた時間帯を加味すると、より価値が増すというものだ。
しかし、忘れてはいけないことがある。「チームとして勝ったわけではないし、引き分けただけ」。殊勲者である中村自身が冷静な視点で発したコメントで試合を総括するべきだろう。試合終了間際のスーパーゴールに酔いしれるのは仕方のないことだが、得た勝ち点は『3』ではなく『1』だった。
2点ビハインドから追い付いた執念は称賛されるべきだが、そこに至る過程に対しては首を傾げざるを得ない。特に1失点目は警戒していた宇佐美とパトリック、そしてフリーにすれば危険なパスを出してくる遠藤に自由を与えてしまった。流れを悪くしたことにとどまらず、選手たちは自分たちのテンションも下げてしまった。
攻撃面も可能性を見いだしたとは言い難い。反撃の狼煙となったゴールはアデミウソンとラフィーニャの個人能力の賜物で、冒頭で触れた中村のゴールも言わずもがなである。ゴールという最高級の産物がいかに個人に依存しているかを象徴している出来事だったが、ボールを保持しているだけでは意味がない。それは得点への手段でしかなく、目的ではない。
対戦相手のG大阪は組織と個の両面でJトップクラスの実力を有していた。そういった点で「どの相手にもしっかり戦えることを証明したと思う」というエリク・モンバエルツ監督の総括は間違いではない。試行錯誤が続くとはいえ、横浜FMというチームと個人が持つポテンシャルはそれなりに高い。まったく歯が立たない相手は国内にはいないだろう。
しかしながら2ndステージが開幕してからの3試合で得た勝ち点は、わずかに『2』。ステージ優勝を狙うには致命的とも言える出遅れで、年間勝ち点でも上位陣に水を開けられてしまった。劇的過ぎる同点ゴールに喜ぶあまり、目的を見失っては意味がない。後半戦の順位は16位なのだから。(藤井 雅彦)