ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表にとって、初の国際大会となるのが8月2日から開幕する2015年東アジアカップ(武漢)だ。
2013年韓国大会で優勝している日本は2連覇を賭けて今大会に挑んでいる。2年前のタフな戦いを知る森重真人(FC東京)も「前回大会で優勝したのは決して簡単なことではなかったですし、前回優勝したことで今回がまた難しい大会になったと実感しています」とプレッシャーを感じながら武漢の地にやってきたという。それを跳ね除けて勝利をつかんでこそ、真の勝者ということになる。国内組のみの日本代表にはそれだけの底力と意地を見せる必要がある。
そんな日本の初戦は2日の北朝鮮戦。まだ陽の高い18時20分キックオフということで、気温35.3度・湿度53%の過酷な気象条件となった。ピッチ状態の悪さ含めて、選手たちの消耗は計り知れないが、何とか90分間走りぬくしかないだろう。
この日の日本のスタメンは、GK西川周作(浦和)、DF(右から)遠藤航(湘南)、森重、槙野智章(浦和)、藤春廣輝(G大阪)、ボランチ・谷口彰悟(川崎)、山口蛍(C大阪)、右FW永井謙佑(名古屋)、左FM宇佐美貴史(G大阪)、トップ下・武藤雄樹(浦和)、トップ・川又堅碁(名古屋)の4−2−3−1。前回経験者は西川、森重、槙野、山口の4人。特にMVPを受賞した山口の一挙手一投足、前線のアタッカー陣の決定力のには注目が集まった。対する北朝鮮は4−4−2。FWリ・ヒョクチョル(7番)の破壊力には警戒が必要だ。
急造メンバーでどこまで連動したサッカーができるかが注目された日本。そんな不安を打ち消すかのように開始早々に電光石火の先制点を挙げる。前半3分、日本は前線で川又が起点を作ったこぼれ球を中盤の谷口が拾い、右へ展開。遠藤航が思い切りよくクロスを上げたところに飛び込んだのが武藤雄樹。この試合が初キャップで初めてトップ下に入った男の一撃が飛び出し、チームはいきなり盛り上がりを見せた。
そこから前半25分までは完全に日本のペース。12分には宇佐美の左からのシュートがGK正面に飛び、13分には遠藤航のタテパスを受けた川又も強烈シュートをGKに当ててしまう。川又は24分に森重→永井→武藤とつながったボールをペナルティエリア内で受けてGKと1対1になるが、これも決めきれない。「点を取ってチームメートの信頼をつかみたい」と話していたストライカーにとっては悔しいシュートミスだった。
川又の決定機の後、相手が徐々にボールをキープするようになり、日本は劣勢に追い込まれる。31分にロ・ハソク(16番)がフリーになった場面、37分にチョン・イグハン(11番)がGK西川正面に放ったシュートシーンなどは得点につながってもおかしくなかった。この時間帯は日本が前からプレスに行った背後を巧みに突く北朝鮮のうまさが光っていた。
その猛攻を何とかしのいだことで、日本は再び盛り返す。38分の宇佐美の強烈シュート、39分の永井の浮き球の右足シュート、44分の永井のGKとの1対1など追加点を奪えるチャンスは数多くあった。こういう場面で決めきれないと、後半苦しくなるのがサッカーだ。前半は1ー0で折り返したものの、ハリルホジッチ監督もハーフタイムの間、選手たちに改めて気合を入れたことだろう。
迎えた後半、日本は果敢に追加点を狙いに行くと見られたが、それ以上に北朝鮮が攻めを加速してきた。彼らはサイドチェンジを多用しつつ、両サイドの深いところから次々とボールを上げてきて、日本のゴール前を脅かす。これには西川や森重ら守備陣も相当手を焼いたが、相手の決定力不足に助けられるか格好となった。
中盤で時間を作りたいハリルホジッチ監督は10分が経過したところで宇佐美と柴崎岳(鹿島)交代。彼をトップ下、武藤雄樹を左FWに入れて流れを変えようと試みた。しかし日本は思うようにボールを落ち着けられず、相手に速攻を繰り出されてしまう。後半17分に日本がカウンターから柴崎がシュートを放つまでは、本当に危ないシーンが続いた。
このチャンスを境に日本ペースに転じるかと思われたが、北朝鮮の粘りは凄まじく、鋭いボール奪取から一気にゴール前へ攻め込み続けた。その攻めをさらにテコ入れするため、彼らは長身FWパク・ヒョンイル(20番)を投入。中盤ダイヤモンド型の4−4−2へとシフトチェンジし、パワープレーを多用するようになる。日本は自陣に引かされ、防戦一方の展開を余儀なくされる。
そこでハリルホジッチ監督は27分、川又に代えて興梠慎三(浦和)を起用。前線でタメを作らせようとするが、その興梠も浦和で見せているようなポストプレーはできなかったが、彼が入ってからはようやく日本が敵陣深いところまで攻め込めるようになる。後半30分には武藤雄樹が持ち前の鋭い飛び出しから2回連続で決定機を迎える。が、惜しくもシュートは枠の外。日本の2点目はどこまでも遠かった。
そうなると、どうしても得点機は相手に行ってしまう。ここまで耐えてきた日本の守備を破られたのは後半33分。ロングボールからパク・ヒョンイルが落とし、右から飛び込んで決めたのはリ・ヒョクチョル(7番)。これには槙野も寄せきれず、西川も反応しきれなかった。後半頭からの悪い流れを断ち切れなかったツケが、とうとう失点という形になって表れたのである。
初戦を落とすと2連覇への道は一気に険しくなる。それを避けるためにも、是が非でも追加点を取らなければならない。そういう意気込みで指揮官は残り6分というところで永井に代えて浅野拓磨(広島)を起用。ワンチャンスを生かそうとするが、逆に間延びしたスペースを使われる苦しい展開を余儀なくされる。
そして最悪の瞬間が訪れたのが後半44分。北朝鮮の左クロスに日本守備陣が反応しきれず、長身FWパク・ヒョンイルに打点の高いヘッドを決められてしまったのだ。相手の単純なパワープレーを封じ切れなかったのは、前半から数多くの決定機を決めきれなかった積み重ねに他ならない。日本の終盤の脆さを露呈するシーンだった。
結局、日本は4分のロスタイムも生かせずタイムアップの笛。1−2で初戦黒星というまさかの結果を突き付けられた。この後の相手は韓国と中国。より難易度の高い相手だけに厳しいが、何とかして巻き返しを図るしかない。幸いにしてこの日は初キャップの武藤雄樹や遠藤航がいい仕事を見せるなど希望もあった。それを次に生かすしかない。(元川 悦子)