大事に積み上げてきたレンガを、自らの足で蹴り飛ばす――。そんな空虚な試合だった。別項に記載したとおり、サイドのマッチアップで後手に回った磐田。ただし、この試合に関しては戦術的な部分よりも大きな問題点があった。
試合後の会見。名波監督の言葉は辛辣だった。「今季最悪のゲーム。自分勝手なプレーをした選手が多過ぎて、可能であれば8人ぐらい交代させたかった」。敗因は明確。チームの約束事に反するプレーが多く見られたことだ。無論、それをオーガナイズするのが指揮官の役目ではあるが、この試合に関しては、その範ちゅうを越えていたように思う。そして、ピッチ上で“空気”を読み取り、軌道修正できるリーダーがいないことも痛かった。
同監督は言う。「サイドを突きたいところを真ん中、真ん中に突っ込んでミスしていた立ち上がりだった。われわれはそんなことをやってきたわけではない」。試合開始直後に先制に成功したが、自らリズムを乱すことになった。それはなぜか。この試合、小林が39分にピッチをあとにしている。序盤、シンプルにサイドを使わず、あえて中央突破を狙うプレーで連続してボールロスト。試合終盤の“アクセント”としてならば分からなくもないが、『まずはサイド攻撃』というチームの約束事からは外れていた。それにサイドで優位な状況もできており、その意味でも選択すべきプレーは明確だったが…。そして、その小林に声をかけ、正そうとする選手もいなかった。守備面でも統率性を欠き、「相手に回されていて、それを何とか追う感じだった」(上田)。攻守の歯車は最後までかみ合っていなかった。
国籍、キャリア、そして、パーソナリティー。個性豊かな選手たちがそろうぶん、チームはデリケートなバランスの上に成り立っている。攻撃で“ストロング”となる選手が、守備では“ウィーク”となることもある。逆に攻撃よりも守備で持ち味を発揮するタイプの選手もいる。各々の不足点を理解し、補い合い、その上で各々の長所を最大限に生かす。そうやってここまで勝ち点を積み重ねてきた磐田。その“生命線”を失えば、当然勝つことはできない。
後半戦に入り、3勝2分2敗。夏場に失速した昨季と似た流れになりつつある。しかし、昨季と違うのはチームとして戻るべき“場所”があること。いま一度、チームの約束事を見つめ直し、徹底するしかない。(南間 健治)