わずか3本に抑えられていたシュートのうちの1本が後半ロスタイムにネットを揺らす。歓喜に沸いたのは終始試合を制圧していた大分ではなく、それまでをひたすら耐えしのいできた熊本だった。
残り12試合で最下位からの巻き返しを狙う大分は、天皇杯2試合でさまざまなオプションを増やして臨んだ今節、勝ちなしだった8月とは見違えるように個々の特長を生かした攻撃的なサッカーを披露した。自陣へと放り込まれる長いボールはことごとくダニエルがはね返し、攻撃へと切り替え続けて相手に仕事をさせない。球際の技術で相手をいなしつつ次第にゲームを支配し、兵働を軸に細かくパスをつなぎながら重層的な攻撃を繰り出して、放ったシュートは相手の5倍近い14本。ただ、どんなに守備ブロックを崩しても、最後に巨大な楯が立ちはだかった。シュミット・ダニエルの度重なるビッグセーブに、大分の放った矢はすべてなぎ払われてしまう。
大分の攻め疲れを待っていたかのように、小野監督は70分、清武と田中を投入し勢いをもたらす。91分、嶋田が右サイドから送ったピンポイントクロスに田中が合わせ、見事な粘り勝ちを手にした。
残酷なまでの劇的な結末に、大分の選手たちは落胆を隠せなかった。確かに21位との勝ち点差も開き、状況は厳しくなったが、冷静に振り返れば収穫も多い。心折れることなくJ2残留を目指して戦いたい。(ひぐらし ひなつ)