■ヴィッセル神戸
勇敢さなくして歓喜も成長もなし
前節・名古屋戦(0●2)は、ミスで負けたのか。その視点は支配的だが、先に得た相手の決定的なミスを神戸は得点できていない。そして、勝てなかったのは、選手間にある温度差が背景にある。それは、ワンプレーにチャレンジする気概のことだ。決してネガティブなわけではない。ただ、積極的にチャレンジできる選手は少なく、その多くは「リスクの少ない」プレーを選んだ。ミスにつながりやすい足元より、セーフティーな裏で受け、カウンターを受けやすい縦パスより、リスクの少ないロングボールを選んだ。さらに、名古屋戦でネルシーニョ監督はミスを理由に森岡を懲罰交代した。一戦必勝の観点で捉えれば疑問が残る。森岡はこの試合で数少ないポジティブなプレーをする選手だったからだ。
そして、試合前に「ミスをするな」の落とし込みを行ったが、第一の目的が勝利なのであれば、マネジメントとして適切かとの疑問もある。継続的な試合出場という欲求を選手が容易に手放すことはできず、チャレンジへのマインドを育めなかった。ただ、高い質を要求する指揮官にブレはなく、その集合体に強さの土台があるとする論理はもっともだ。攻守の質にチャレンジする勇敢さを失い、レベルアップのチャンスをフイにする選手に、勝利の女神が微笑まないのも確かだ。
前節の反省は今節にぶつけたい。森岡は「完成度が高い」と鹿島を警戒し、北本は「この一戦に集中したい」と強調。ナビスコカップ準決勝と同じカードだが、その前哨戦ではない。出場選手は基本的には指揮官が決める。指揮官は結果への責務を負い、選手たちは勇敢に戦う義務を負う。ピッチ上の選択と判断への強気のチャレンジは、味方を助け、歓喜を呼び、結果のみならず成長も促す。大切なホームを負の感情が支配する舞台にしてはならない。(小野 慶太)
■鹿島アントラーズ
立ち塞がる天敵のブラジル人指揮官
G大阪戦(2nd第10節・1●2)に続き前節・浦和戦(1●2)にも敗れてしまった鹿島は、再び激しい練習に身を置いた。浦和を意識するあまり、どこか地に足が着いていなかった先週から一変、集中力の高い練習が見られた。痛い敗戦に気落ちしている暇はなく、チャンピオンシップ出場権を得るには、2ndステージ優勝が最も近道。残り5試合をすべて勝つしかない。
しかし、その前に難敵が立ちふさがる。リーグ戦からナビスコカップ準決勝とつながる中3日での3連戦は、すべて神戸との対戦。率いるのはもちろんネルシーニョ監督だ。昨季まで柏を率いていたこのブラジル人監督には目下3連敗中と分が悪い。さらにアウェイの公式戦に限ると、ここ数年の対戦成績は2分4敗。最後に勝利したのは、実に04年の名古屋時代(J1・2nd第15節・2○0)までさかのぼらなければならない。鹿島にとってはこれ以上ない天敵だ。
ベテランの曽ケ端でさえ「経験がない」と言う短期間での同一カード3連戦は、ただでさえやりづらさを伴う。その対戦相手の監督がネルシーニョ監督となれば、頭脳戦となることは必至。交代カードの切り方で、就任当初の思い切りが影を潜めてきた石井監督は、虚々実々の駆け引きで勝たなければならない。さらに、今節の試合を終えたあと、チームは一度鹿嶋に戻るため、移動を含めたコンディショニングも重要な要素となる。「難しいゲームになる」(曽ケ端)ということは、まず間違いない。
ネルシーニョ監督はまず鹿島の長所を消しにくるだろう。ただ、鹿島も「相手のやり方を見ながら、自分たちのやり方を変化させられたら」(西)という戦い方を目指す。ハイテンションながらも一本調子だった浦和戦を払しょくするためにも、試合の流れを感じながら勝機をつかみたい。(田中 滋)