絶望からの生還だった。
新潟の劇的な勝利を演出した“事件”は66分に起こった。ハーフライン付近で赤嶺を背走していたレオ・シルバが、後方から蹴り上げる。ボールとは直接関係ない場所でのプレーだったため一瞬、何が起きたのか分からなかった。混沌とする状況下で主審は、新潟の攻撃を中断しゲームを止めた。主審は副審に状況を確認、両チームの小競り合いが起きる中でレオ・シルバにレッドカードが提示された。騒然とするスタジアム。新潟にとって、数的不利に加えて第2戦のレオ・シルバ不在は、決勝への希望の灯が消えかかる絶体絶命の状況だった。
そこからが采配の妙だった。山崎を下げて[4-4-1]の守備ブロックを敷いた柳下監督はその約10分後、1トップ指宿に代えてラファエル・シルバを送り込んだ。指揮官は「第2戦への疲労を考慮したのと、一発を狙った」と説明したが、高さ不足を考えると多少の守備リスクも潜在していた。しかしその果敢なチャレンジが土壇場で奏功することになる。
電光掲示板の時間が消える間際の90分。前野が井手口のパスをカットし迷わずラファエル・シルバへとパスを送る。前線でボールを受けた快足野郎は、追いすがる岩下を難なくかわしてエリアへと進入すると、右足でゴールネットを揺らしてみせた。「相手が前がかりになる中、良い形でフィニッシュまで持っていくことができた。チームみんなのゴールだ」(ラファエル・シルバ)。ビッグスワンゴール裏は熱狂のるつぼと化した。
アウェイゴール献上などを考慮すれば手放しで喜ぶことは決してできないが、危機的状況からの逆転勝利はチームに大きな勇気をもたらす。新潟はホームで挙げた勝利をアドバンテージに、敵地へと乗り込む。 外堀は埋めた。あとは本丸を落とすだけだ。(藺藤 心)