■鹿島アントラーズ
上から見下ろす三冠王者を乗り越え常勝軍団復活へ
Jリーグは世界でも例を見ないほど実力が拮抗したリーグだと言われる。だが、わずかな差を着実に勝利に結び付けることができるクラブが存在する。90分間の試合内容は悪くとも、一瞬のスキを突いて勝ち切ることができる力。それは勝ってきた者にしか分からない“勝者のメンタリティー”。その有無が、実力拮抗のリーグでは勝敗を左右してきた。
鹿島とG大阪。過去10年で両チームが獲得した国内タイトル数はともに7(J2タイトルは除く)。もちろん、この数字よりも多くのタイトルを得ているクラブはおらず、近年のJリーグをけん引し、勝者の矜持を示してきた。しかし、その立ち位置は微妙に違う。昨季の第27節で対戦し、3-2で激闘を制したG大阪が、そこから一気に三冠まで上り詰めたことで優劣が生じた。
その差は、今季になって如実に現れ、鹿島はリーグ戦1stステージの完敗(第10節・0●2)に続き、2ndステージ(第10節・1●2)でも惜敗。特に、2ndステージの試合は、良い形で試合に入りながら先に点を奪われ、見事に試合をコントロールされてしまった。
過去に獲得した16冠というタイトル数と伝統の力は、対戦相手の警戒心を煽る。時には試合前から相手を呑んでかかることもできた。だが、その力もタイトルを獲らなければ薄れるのは当然のこと。むしろ、現三冠王者であるG大阪には通用せず、上から見下ろしているのは青黒のほうだろう。「内容が悪くても勝ち切る力は向こうが上」とクラブ幹部も口をそろえる。だからこそ、乗り越えなければならない相手なのだ。
昨季から、鹿島は大事な試合を落とし続けてきた。それを変えるには、矛盾しているようだが、勝つしかない。勝てばタイトルの獲り方を学ぶことができる。勝者のメンタリティーも取り戻すことができる。常勝復活のためには、絶対に勝たなければならない。(田中 滋)
■ガンバ大阪
立ちはだかる最強の相手を凌駕し新たな黄金時代へ
広島相手に劇的な逆転勝利(3○2)を収めて得た昨季のナビスコカップ優勝は、1年でJ2から復帰して来た名門の復権を強く印象付けるものだった。「ガンバにとって大きな財産。ここからまた新しい時代が始まる」。自身にとっても監督として初のタイトルを手にした直後の長谷川監督の“予言”は、その後、三冠という形で的中する。
ナビスコカップに始まり、リーグ戦、そして天皇杯の3タイトルを独占した大阪の雄は、昇格1年目での三冠制覇という前代未聞の偉業を成し遂げ、Jの頂点に返り咲いた。
過去、鹿島だけが成し遂げているトレブル(三冠)は、確実にチームを変貌させた。「タイトルっていくら獲っても良いモノ。一度優勝を経験しても満足できないし、これからも獲り続けたい」(今野)。
遠藤や明神、二川ら西野政権下で黄金時代を経験した主力はタイトルを獲る喜びを、難しさを知り尽くす男たちだが、昨季のナビスコカップ制覇を機に、チームには確実に“勝者のメンタリティー”がしみ込んだ感がある。“勝者のメンタリティー”。サッカー界ではしばしば指揮官や選手が口にする言葉だが、頂点に立つことでしか得られない成功体験の同義語だ。そんなメンタリティーをJリーグ創設当時から、クラブのDNAとして受け継いできたのが鹿島という常勝軍団である。両チームの順位や状況に関係なく、G大阪側からは常に鹿島をリスペクトする声を聞く。「Jで一番強い相手が鹿島だし、チームが完成し切っている」と倉田が言えば、米倉も「どこよりタイトルを獲っている常勝軍団」と評する。
かつての三冠王者との大一番で試されるのは現三冠王者のスタイルだ。西野監督が率いた当時は“うまいサッカー”で頂点に君臨したG大阪だが、長谷川ガンバの最大の武器は、長年鹿島の専売特許だった“勝負強さ”。大一番で鹿島に勝ち切ったとき、大阪の雄は新たな黄金時代を迎えることになる。(下薗 昌記)