ベンチからずっと戦況を見守っていたベテランの本山が「今シーズンベストゲームに入る」と太鼓判を押す。それほど見事な試合運びができた一番の要因は“勇気”だ。リーグ戦(明治安田J1・2nd第10節・1●2)では相手(G大阪)を押し込みながらカウンターに沈んだ。同じ戦いをすれば同じ憂き目に遭う可能性がある。しかし、石井監督に率いられたチームは、もう一度、前からボールを追い、積極的に主導権を握る戦いを選んだ。
「前の試合があったから、良い流れで進めているときも気を付けようという気持ちがあった」
すっかりリーダーの気質を備えるようになった西が振り返る。つねに隣の選手と声をかけ合い、カバーを怠らない。90分間、その姿勢を貫いたことが、勇気と両輪となり、チームを完勝にまで運んだ。
とはいえ「結果というのは、やっぱり準備の段階である程度決まってくる」(西)。この試合に向けて準備してきたことが、自信の下支えとなったことは間違いない。監督が出した指示を並べてみると、そのことは如実に浮き彫りとなる。
「どうにかして中央から外に出させよう」
「サイドからのボールに対しては、大外は捨てて自分の前のDFのカバーに入ろう」
「CKは、パトリックの背後を狙おう」
相手の攻撃をいったん外に押し出してから守備に入り、クロスに対しては必ずカバーリングを怠らなかった。そして、狙いどおりの形からの先制点を挙げた。ただし、監督の指示が最初からうまくできたわけではない。セットプレーでファン・ソッコがマークを外せば「何度も同じ形でやられるな」と叱責し、山本の動きが鈍ければ中村が「もっと寄せろや」と指摘する。年齢の上下など関係なく、全員で勝利を追求したことが、日に日に戦術の精度を上げ、チームに連動性をもたらした。
「日ごろの練習の成果が出たんだと思います」
さらりと言い放った本山の言葉がすべてを物語っていた。(田中 滋)