追い込まれた状況で際立ったのは、チームの一体感だった。
退場者を出し、10人となってからも大崩れしなかった磐田。それはなぜか? 「チームとしてやるべきことは変わらなかった」とは駒野の弁。数的不利の状況となり、変則的な布陣にはなったが、チームとしての基本方針は不変だった。
それは“長所を生かす”というスタンスである。10人かつ、大黒柱のジェイを前半のうちに負傷で欠く状況で、それでも勝ちに行った磐田。その方法論にブレはなかった。2得点を挙げたアダイウトンは、「ハーフタイムに、自分のストロングポイントを出すようにと監督から指示があった」と語る。ブラジル人MFの武器とは鋭いドリブル突破。名波監督に「“サボり”ながら、前に出ていくタイミングをうかがってほしい」と伝えられていた。
そのぶん、守備の負担は周囲の選手たちが補った。ボランチの上田は、「アダ(アダイウトン)のところをケアしていたぶん、アダが点を取ってくれて、こちらとしても頑張った甲斐がある」と表情を緩めた。状況に応じて上田、川辺、小林、さらには最前線の森島の4人で中盤をカバー。試合後、アダイウトンは「みんなのおかげで自分のストロングポイントを出すことができた」と感謝の思いを口にした。
まさに、“ギブ&テイク”―。このバランス感覚は即席で出せるモノではない。名波監督は、今季のチームで最も変化したことは「“我”を捨て、“仲間”を意識する姿勢」だと語る。4カ国の選手が在籍する磐田は、お互いを尊重し、各々の特長を掛け合わせることで、チームとしてのベストパフォーマンスを引き出す―。そんなチーム作りをしてきた。名波監督が指導において最も強く“カミナリ”を落とすのは、技術的なミスではなく、チームメートへのリスペクトを欠く振る舞いに対してである。「コミュニケーションの“質”が変わってきた」と同監督は手ごたえを口にする。
シーズンを通じて積み上げてきた信頼関係。この試合の最大の勝因はそこにある。(南間 健治)