81分だった。高木善に代えてウェズレイを投入。冨樫監督が、40試合を戦って一度も使っていない手段である。ただ、意図は明確。ヘディングの強いCBのウェズレイを前線に置くパワープレーだ。これまでも時折、終了間際にロングボールが増えることはあったが、交代枠を使ってまでハッキリとパワープレーをするという意志を見せたことはなかった。あくまでも、“地上戦”で勝負するスタイル。「こだわりが強い選手は多い」(中後)のが東京Vだった。
だが、今まで執着してきたスタイルを崩してまで東京Vは得点を奪いにいった。交代の瞬間は、抵抗を覚えた選手もいたかもしれない。結果が出なければ、ただの選手交代とは違った影響を与えかねない“賭け”の一手である。そして、冨樫監督は賭けに勝った。86分、ウェズレイのヘディングシュートがポストに当たったところを、アラン・ピニェイロが押し込み同点ゴール。典型的なパワープレーの成功例である。中後は、「あれで取れていなかったら。たらればの話だけど…」と言った上で、「結果が出たので、そんなに問題はないと思う。でも、その前に点を取りたい。それがすべて」と強調した。
警戒していたセットプレーで失点したこと、引いた相手を崩せなかったこと。課題は少なからずあったが、兎にも角にも、なりふり構わずに勝ち点1を奪い、東京Vは最終節にJ1昇格プレーオフ進出の希望を残した。(石原 遼一)