客観的に見れば消化試合だろう。だが、京都のサポーターにとっては、ずっと記憶にとどめておきたいゲームになったに違いない。12年間、紫のユニフォームだけを身にまとい、今季で現役を去る中山の最後の試合を、京都はドラマチックな逆転劇で彩った。「勝って送り出す」。戦前から意気込んでいた京都の選手の思いが、前半は空回りする。三島のポストプレーを軸にDFの裏を狙う水戸の攻撃に苦しみ、京都は主導権を引き寄せられない。25分には岩尾のゴールが決まり、水戸がリードして試合を折り返す。
石丸監督が「気持ちを見せろ」と選手を送り出した後半開始早々、石櫃のクロスに駒井が飛び込み、スコアを振り出しに戻す。77分、京都に追い風が吹く。ルーズボールにも見えた局面で田向にレッドカードが提示され、退場に。数的優位に立った京都が攻勢に出る。終了間際の90分、ひざの負傷に長く苦しんできた中山が約1年2カ月ぶりのピッチに立つ。待ち望んだ男の登場にスタジアムの空気が一変。決勝点はその直後だった。91分、原川のCKに頭で合わせた大黒のシュートが、ゆるやかな孤を描いてゴールに吸い込まれた。
京都の最終順位はクラブ史上最低の17位。感傷的な気分に浸れる状況ではないのかもしれない。しかし、京都サンガF.C.を見守る者にとってこの試合のラスト数分間は、惜別の寂しさと再会の興奮が心地良く入り混じった、幸福な時間だった。(川瀬 太補)