喜びがかなり控え目な、昇格の瞬間だった。「長野戦が終わったときは全員で爆発的に喜んでしまったので…」と振り返るのはエースの鈴木孝。スタンドからの誤報で昇格が決まったと“ぬか喜び”した11月23日のJ3最終節・長野戦(1△1)でパッションを出し尽くしてしまったのだろうか。鈴木孝は「喜んでいるけど喜んでないみたいな…。不思議な感じ」と心境を振り返る。ただ、それは“町田らしい”昇格だったのかもしれない。
深津は「今季を象徴するような試合だった」と90分間を振り返る。前半は苦しい展開だったが、それも町田らしかった。そんな展開を何度も乗り越えたからこそ、深津は「我慢して(前半を)ゼロで抑えて、後半に1点取るというのは僕たちの流れ」と胸を張る。
町田はJ2から降格し、J2に返り咲いた初のクラブとなった。10年は、JFL・3位で昇格の成績条件を満たすも、スタジアムが規定を満たせずJ2入りを断念した。11年に昇格を決めたが、12年のJ2で最下位に終わって1年で去った。町田はそんな“持ってない”クラブだった。だが、予算の減った中でも体制が揺らぐことはなく、地域との結び付きも損なわれなかった。今季、クラブ史上最多を記録した観客数はその証明だろう。歩みはゆっくりだが、13年のJFL・4位、14年のJ3・3位と積み上げ、今季はようやく2位でJ2・J3入れ替え戦進出を果たした。“持ってない”クラブが、愚直さで苦境を打ち破った。そんな1年間であり、この1試合だった。(大島 和人)