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その名を刻んだ男たち2015 MF 13 鈴木 啓太(浦和レッズ)インタビュー③

2015/12/23 16:00



―そのころにプロでこれだけ成功するという自信はありましたか?
「100%と10%という感じですね。『絶対に成功してやる』という100%の強い気持ちはありましたし、でも一緒に練習してみると『この人たちは何てうまいんだろう』、『俺、下手くそだな』みたいな気持ちになりました。で、その自信は10%まで落ちました(笑)。『本当に成功できるのかな?』という感じです。でも練習で筋力トレーニングをしたりして自分の気持ちをまた100%に持っていって、『絶対に成功するんだ、俺は』と思いながらトレーニングをしていました。常にその繰り返しです。だから二人の自分がいるではないですけど、その自分に負けたら次はないわけです。『成功できるかどうかなんて分からないけど、成功するんだ俺は』と思って入ってきたので、落とされるわけですよ。それで、落ちたらまた上がっての繰り返しです。それがずっと続いてきました。いまだに不思議ですね。『よくやったな』という感じもあるし、でもその反面、『もっとできたかもしれない』というか、『もっと努力していれば』という感じもあります。結局、そういう狭間でやってきました。でも、引退すると決めてからは、やり切った感というか、もうこれでおしまいというのは、自分の中でまったく違和感なく受け入れられている感じです」

―そういう気持ち的にも浮き沈みがある中で、プレースタイルやポジションを変える選手もいますが?
「ずっとそのままですね。もともとはもうちょっと攻撃的な選手でしたけど多分、僕の強みというのは監督が『これをやってほしい』と要望することをやるところだと思います。自分のプレースタイルなんてないと思っているから、監督のオーダーをやり切ることができます。それが自分のやり方です。さすがにいま『FWをやれ!』と言われたら、『監督、それは間違っていますよ』と思いますけど(笑)。でもプレースタイルを変えるという感覚ではないですね。そもそも『プレースタイルって何?』という感じなんですよ。特に武器があるわけでもないので。ただ、僕が高校の先生によく言われていたのは、『幹になれ』と。『枝葉じゃなくて幹になれ』と言われていて、それはいまになればよく分かります。『先生はこういうことを言っていたんだな』と分かるようになってきました。そういう選手になりたいと思ってやってきました。自分のプレースタイルどうこうというよりも、『目立たないけれどチームにとっては欠かせないよね』と言われるような選手を目指していました」

―技術があって華やかな選手がいるチームだとより鈴木選手の持ち味が生きる気がします。
「本当にそういう感じです。だからうまい選手がいたほうが僕は生きるんですよ(笑)」

―そういう意味でも浦和というチームは鈴木選手に合っていたと思います。
「時期としても、僕はすごく恵まれているんです。浦和がJ2に落ちて、活躍していた選手が引退したり、海外に移籍したり、もう一度チームをイチから作り直すという時期でした。僕は運良くそこにいました。チームをもう一度土台から作って、良い選手を獲得して、そこで06年、07年に結果が出たと思います。本当にもう少し時期が違えば僕のような選手はもしかしたらサッカーをここまで長く続けられなかったかもしれません。いろいろな人との出会いがそうさせてくれました。ただ、自分でも胸を張って言えるのは、『それだけ努力したからね』ということです。下手でしたけど、ただ単に運が良かっただけではありません。最近、ある人と話をしたときに『努力は運を支配する』とおっしゃっていました。引退すると決めたあとに話の中でそういう言葉が出てきて、確かにそうだなと思いました。努力しなければ運なんて気まぐれなモノだし、でも努力した人間はそういう運も支配できるのではないかと思うんです。『自分のサッカー人生というのはもしかしたらそうだったのかな』と思いました。自分で『僕は努力してきましたからね』なんて言うのも変な話なんですけど、でもだからこそ僕は言いたいというか、これからサッカー選手を目指す子どもたち、それぞれの夢に向かって頑張っている人たち、それから未来への自分に対してもそう思います。ただ運が良くて人よりもちょっとだけサッカーがうまくて、浦和の街とか、親が丈夫に産んでくれてとか、そういう要素はいっぱいありますけど、それも結局は自分がそのときに何をやったかということだと思います。そのやった何かが自信になって『よし、また今日もいけるぞ!』というふうになります。その繰り返しというか。自分のサッカー人生を振り返ると、そういうことを最近すごく強く思います」

浦和からサッカー界に恩返しを

―来年以降のビジョンで、考えていることがあれば教えてください。
「考えていることはありますけど、何て言ったらいいでしょうか。浦和のために働きたいというか、浦和のためになることをしたいなとは思っています。それがどういう形かはいろいろあると思います。『浦和のために何かをしたい』。でも大きく言えばサッカー界から受けた恩恵を自分が恩返しできるようになりたいです。そういうことをしたいなと思っています。だからまだ固まってはいないんですけど、漠然と『何がしたい?』、『これからどうするの?』と聞かれればそういう回答なのかなと思います」

―鈴木選手ほどの実績を残した選手だと、できることの枠組みが大きいというか、日本サッカーというところまで広げることができると思います。
「ぜひそういう方に応援してもらいたいですね(笑)。サッカーを盛り上げる。そこなんですよね。それは日本だけじゃなくて、アジアの人たちもそうだし、とにかく『サッカーって素晴らしいよね』とか、『健康って素晴らしいよね』とか。そういうところまでいきたいですけど、まずは浦和レッズを幸せにするために浦和レッズに関わってくださっている方、一緒にやってくれている方が週末、『すごく楽しかったね』と言ってくれる、そういうところからいろいろな方面に良いエネルギーを拡散できたらいいなと思います。僕はここ(浦和)でそういうふうに育って、『この(サッカーという)エンターテインメント最高だな』と思うので。いったん、仕事のことを忘れて、まあ仕事を忘れてはいけないですけど(笑)、それぐらい楽しむという人もいると思いますし。サポーターの方から『私、元気になれるんです』という手紙ももらうんです。それってやっぱりサッカー選手としてもそうだけど、人としてすごくうれしいですよね。『あ、これで元気になってくれるんだったら』と思うし、そういう良い熱をまずは浦和から発信できたら良いなって思います」

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