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その名を刻んだ男たちMF 8 宮沢 正史(FC岐阜)インタビュー④

2016/1/11 11:30



パスへの美学

――FC東京のお話の際に少し出てきましたが、では宮沢選手が追求してきたモノはやはりパスでしょうか。
「そこだけは追求してやってきましたし、振り返っても、自分は本当にパス一本で生きてきたんじゃないかなと思います。意味のあるパス、そのための間、速さ、相手とのタイミング。そこにはいろいろな要素があると思いますが、やっぱりパスです」

――そう思った理由は何だったのでしょうか。
「自分が生きる道。それに尽きます。身体能力があるわけでもなく、足が速いわけでもなく、体が強いわけでもない。点が取れるわけでもなく、ヘディングが強いわけでもなく、ドリブルが速いわけでもない。どこかで人と違うことをしなければいけない。宮沢正史という人はどういうモノなのかということの追求は、パスで生きていくしかないということです。何を自分の中で出せるか。そう考えたときにパスで極めていくしかない。そういう思いでした」

――影響を受けた方などもいるのでしょうか。
「大学のころからもちょっとは思っていたことですが、確信に変わったのはプロに入ってからです。人と違うことをしないといけない。自分の武器、ストロングを磨かないといけないという思いでした。初めはテツさん、(選手では)三浦文丈さん(FC東京/16年長野監督)の存在が大きいですけれど、いろいろな日本人選手や外国籍選手、いろいろな方を常に見ていましたし、キックの種類も盗んで試しながらやっていました。もちろん平均で全部が高ければ一番いいですが、そういう選手はなかなかいない。自分を出す、自分が生きる道ですね」

――具体的にはどのようなこだわりを持ち、追求してきたのでしょうか。
「状況に合った最適なパスが前提ですが、ボールの回転が好きなんですよね。フォームもそうだけれど、とにかく綺麗な回転というのをずっと意識していました。相手に合わせたパス、プレーしやすい(回転の)パス、あるいは相手の嫌がる場所、それはずっと考えながらやっていました」

――ピッチ状況はもちろん、相手に合わせることやバランスを考えると、選手の性格やクセ、人柄などもつぶさに見ていないとできないですよね。
「選手の特徴を把握することは、出し手としてすごく大事なことです。裏に抜けるのが得意な選手は足元で受けるのが苦手なケースが多いし、足元で受けたいタイプは裏に抜けるのが苦手だったり、スピードの問題も出てきたりします。もちろん味方と相手の状況や試合の流れを考えた上で決断しなければいけないですが、例えば戸田さんとナオとでも違うし、(ポジションが)右か左かだけでも全然違う。戸田さんはワンタッチゴールゲッターなので、できるだけゴールに近いところで、より裏が多い。ナオはドリブルのスピードがあってキレがあるので、裏でも足元に出せるし、速いボールを出したほうがいい。相手の状況もあるけれど、基本的にはそういう意識の下でやっていました」

――そういえばずっと白いスパイクを愛用されていましたよね。
「02年の(日韓)W杯のときに“リバウドモデル”と言って、白いスパイクに青・黄色のヤツが出たんです。それまではみんなずっと黒のスパイクで、白のスパイク(の先駆け)がそこだと自分は思っているんです(笑)。そこからいろいろなメーカーが増えていくんだけど、これが自分の足にすごくフィットしているので、それから14年間ずっと。最後は白がなくなっちゃったから赤を履いていたけれど、形は一緒なんです」

――そんなこだわりも…。
「もちろん感覚的な問題だろうけど、黒いスパイクより、白いスパイクのほうが目に入ってプレーしやすいんですよ。パス一つとっても、実はこだわりのスパイク。困ったもので赤もなくなってしまったのですが、自分もちょうど引退したので(笑)」

――主将を経験したことも一つだと思うのですが、宮沢選手を知る人に話を聞くと、「ピッチ内外で本当に周りをよく見ている人」と返ってくるんです。
「キャプテンはもちろん、出し手としても、やっぱり細かいところまで見ておかないといけない。サッカーだけではなく、チームの和の部分もそうです。岐阜で残留争いをしているときもそうだし、大分で昇格するときもそうだし、いろいろなところまで気遣いや心配りをしないといけない。そう思ってやってきました」

――今後についてはやはり指導者を考えていますか。
「そういう方向で行きたいとは思いますが、いろいろな角度からサッカーを学んだり、いろいろな人に出会ったりして、いろいろな話をしたいなと考えています。プレーヤーとしての視野から、いろいろな角度と広い視野で見て、勉強していきたいなと思っているので、これ一本というよりは、ここまで育ててもらったサッカーをもっと追求していきたい。いろいろなことができる、いろいろなことを学びたい、ということですね」

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