Photos: Norio Rokukawa
十分に計算された6人の交代
ターンオーバー。ある種の際どさを持つ用兵術だが、結果としてその決断は吉と出た。
タイ戦に当たって日本は先発6人を入れ替え。GK櫛引政敏、DF岩波拓也、MF遠藤航、FW鈴木武蔵とセンターラインのコアとなる選手は残したが、リスクのある決断だったのは間違いない。力の差があるとはいえ、何が起こるか分からないのがサッカーというスポーツである。ただ、タイの第1戦を視察した上で手倉森誠監督は決断を下した。「決勝トーナメントで万全の状態でいる」という大目的のための選手入れ替えだ。
これができた背景には、タイのスタイルもあったのだろう。技術に自信を持ち、“自分たちのサッカー”を貫いてくるタイプ。そしてフィジカル面に難があって、高さで日本に対抗できないチームであること。いざとなればFWオナイウ阿道やDF植田直通を使った力押しという手もある中での入れ替え策だった。
体力的な温存ができた中で連勝を飾って決勝トーナメント進出も決まり、第3戦はまったく出番のなかった選手を投入できる状況になった。理想的と言うほかない流れが生まれており、こうなると油断が心配になるくらいである。
選手を入れ替えながら戦っていく方針は、心理面でもポジティブに作用している。「誰が出ても、誰が出なくなっても、ベンチで『なんだよ』という感じになる選手がいない」(DF室屋成)のは、先発を固定しない効用だろう。「過去の負けた大会にはなかった一体感が出てきている」と証言したのは、その大会にいずれも参加してきているMF矢島慎也である。
試合をスタンドから観ていても、ベンチメンバーのリアクションが良く、一緒に戦っている感は十分にある。全体としてチームが成熟し、一つのチームとして完成されてきているのは間違いない。(川端 暁彦)