Photo: Atsushi Tokumaru
「私はサプライズが好きなんです」
ミルトン・メンデス監督のそんな告白に、誇張はまったくなさそうだ。新監督が全体練習、スタートミーティングとサポーターを驚かせ続けたチーム始動日だった。
サプライズは練習前の写真撮影から始まっていた。選手とコーチ陣、スタッフが全員入って撮る…ところまでは予定どおり。ただ、メンデス監督はクラブハウスの女性従業員3名を自らの隣に引っ張り込み“センターポジション”を譲った。日立柏サッカー場に集まっていたサポーターもこれを見て拍手喝采。人心掌握に長けた新指揮官らしい鮮やかな“つかみ”だった。
日立柏サッカー場のスタンドに集まった黄色いサポーターとの全体撮影も、監督の「散らばろう」という一声で、選手とサポーターが入り混じって撮ることになった。ファンサービスエリアに設けられていた選手たちとサポーターを仕切る柵も、監督の一声で撤去。現場とスタッフ、サポーターまでクラブに関わる全員が家族として一体になるという姿勢を、メンデス監督は形で示していた。
場を柏市民文化会館に移して行われたスタートミーティングでも“メンデス劇場”は際立った。今季のスローガン「柏から世界へUNIDOSSOMOSFORTES」の説明では何と“小道具”が仕込まれていた。メンデス監督は「みんなが団結することで、家族として戦うということです」とポルトガル語の意味を説明し、続いて「日本では武将が弓矢の話をしたと聞いています」と毛利元就の故事に触れる。いきなり弓矢を取り出して場内を沸かせると、折れない“三本の矢”を示しながら「イッチダンケツ!」と日本語で叫んでみせた。パフォーマンスにとどまらず、熱い言葉と全身から発散するエネルギーで、その場に招かれた1,200名のサポーターを何度も沸かせていた。
試合以外でファンをどんなに喜ばせても、今季の成功は保証されない。しかし柏はまず監督交代、主力選手の大量退団によって生まれたネガティブな空気を晴らす必要がある。メンデス監督のサプライズは、そんな“もやもや”を消し、クラブとサポーターを一致団結させるために重要な意味を持つモノだった。(大島和人)