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国際舞台での勝利経験が不足している世代だけに、手倉森誠監督は「自信を付けさせたい」と就任以来、何度も口にしてきた。「彼らにはコンプレックスがあった」とも言う。12年のAFC・U-19選手権以来、“アジアの準々決勝”という同じステージで敗れ続けてきたチームにとって、ここはまさに最大関門。指揮官は、勝つための用兵に徹した。
先発の選考方針は明瞭。「高さ対策でそろえたメンバー。セットプレーで競れる選手を選んだ」と言うように、FWオナイウ阿道、MF原川力、DF亀川諒史といった同ポジションのライバルに比べて空中戦に長けた選手をピッチに並べた。
唯一の例外は左MFに中島翔哉を起用したことだが、これは試合当日の朝になって決断した予定外の選択。「最後は直感だった」と言うように、「全部を相手に合わせるだけでは勝機を逃すのではないか」という少々漠然とした、しかし「経験からくる感覚」に基づいて豊川雄太を先発から外した。結局、その豊川が交代出場から得意のヘディングを突き刺し、中島は120分フル稼働する持ち前のスタミナを誇示して2得点を挙げたのだから、采配的中と言うほかない。監督自身、「『オレ、なんか冴えてるな』と思ってしまった」と笑うのも無理はない。
もう一つのポイントは、交代の決断自体を待ったこと。田嶋幸三団長が「もし自分が采配をしていたら、もっと早く動いてしまっていたと思う。よく手倉森監督は我慢した」と賛辞を惜しまなかったとおり、相手が疲れて足が止まるまで待って動き出した判断も吉と出た。この大一番で延長戦もやむなしと腹をくくった胆力は見事だった。
もちろん体力的なアドバンテージが日本にあったのは、グループリーグでターンオーバーを重ねて消耗を避けてきたことと、徹底してコンディショニングを重視した練習を続けてきた成果である。そうしたマネジメントを含めて、ただ勝利へ向かう指揮官の用兵能力が際立ったゲームとなった。(川端 暁彦)