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イヤな雰囲気をはねのけたのは、みんなの守備力だ/AFC U-23選手権2016準決勝 イラク戦解説

2016/1/29 6:00


Photo: Getty Images

低さを心配していたが…

 あのMF原川力の決勝点は、すごかったね。また延長になるかなと思っていたら、意外な選手が決めてくれた。難しい場面で、こぼれ球をボレーで打った判断が良かった。FW久保裕也の1点目にしても、難しいシュートをよく決めた。

 失点は、CKからだった。FW鈴木武蔵がニアで情けないヘディングをしたところから始まっている。GKにしても、余裕がなくCKに逃げられなかった。やっと手が出たところで、CKに逃げるか敵に渡すかでは大違い。二度、CKに逃げるタイミングがあったわけだが…。そして最後に競り負けたのがMF遠藤航だった。日本の低さを心配していたが、たまたま失点がその形になった。前半終了間際に追い付かれ、ハーフタイムの雰囲気は良くなかったかもしれない。

 グループリーグで一番強かったのは北朝鮮だったが、イラクはそれよりも強いように見えた。イラクの国内リーグにもブラジル人がいる。ブラジル人からもテクニックを学んでいるのだろう。ブラジルのエッセンスが入っていて、南米系の技術を持っているうまい選手がいた。そのチームに追い付かれた。イヤな雰囲気は流れたけれど、それをはねのけたのはみんなの守備力があったからだ。

ボールのないところの動き出しが忠実

 ここにきて、“チーム”になってきた。特に、ボールのないところでの動き出しが速く、忠実だ。ボールに直接関わりのない選手たちも、奪った瞬間、奪われた瞬間のことをしっかりと考えて動いている。“攻守の切り替え”と言っても、ボールを取った、取られたという局面だけを見がち。それだけではないのは想像に難くないだろう。Jリーグでも、ボールと遠い位置の選手が「どうしたらいいんだ?」というようなリアクションをしているのも見受けられる。一方でこのU-23日本代表は、監督から言われている指示だけではなく、選手たち自身が真の意味で“切り替え”の意識を持って、動き出しをしているのが伝わってくる。「攻守の切り替えをしっかりしよう」なんて、耳にタコができるくらい言われているはずだが、彼らは“共通の感性”として、自分たちのモノにしているのだろう。

 それに、体力勝負になっても自信があるのだなと感じる。アグレッシブさが途切れない。切り替えの部分と、タフに走れるということ。それがこのチームの秘密の魅力、隠し味だね。

涙の裏には団結力があった

 MF中島翔哉、MF南野拓実といった中盤2列目の選手が中に入って良い仕事をしているが、もっと機会を増やしていい。久保や鈴木をどう動かすか。中に入って、外に出てきたSBをどう動かすか。2列目がギャップに入り込み、CBやボランチから正確なボールをそこへ入れて前を向いて仕事をする。色気を持っている中島や南野が、そういった仕事がもっとできるようになるといい。

 FWオナイウ阿道が投入されて、最初のシーンで相手を背負って良いポストプレーをした場面があった。エルゴラは中東でも売っているのだっけ?(笑) 前回指摘したように、「絶対に取られないんだ!」という気持ちを入れてプレーしているのは見えた。それも、本当に大事なことなんだ。

 この勝利でリオ五輪出場を決めた。選手たちが思っている以上に、日本サッカー界に大きな貢献をしたことになる。本当に、よくやってくれた。手倉森誠監督が一番うれしそうに見えたのは気のせいだろうか。選手たちの、試合後の涙は団結力の裏返し。それが証明されている。あのDF山中亮輔も泣いていたな…。これもすぐ過去のことになってしまうが、チームがまとまっている事実は消えない。

 そして決勝は日韓戦だ。韓国のサッカーマンは全員、「絶対日本には負けたくない」と言う。焼き肉屋に行ってまでも、ずっと言われるからね(笑)。特別な感情が存在する。決勝が韓国戦、面白いじゃないか。(小見 幸隆)

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