Photo: Atsushi Tokumaru
タイトルへの渇望と自身の成長を懸けて
常に成長を求める水沼宏太の選択は、移籍だった。慣れ親しんだ環境を変えることだった。
決して鳥栖というクラブに不満があったわけではない。クラブが初めてJ1に昇格した12年、栃木から鳥栖にやって来るとレギュラーとして定着。主力として欠かせない地位を築き上げていった。チームワークを大事にする鳥栖において、チームメートとの関係性も良好で、本当に仲の良い集団の中で居心地の良さも感じていた。「僕はサガン鳥栖が大好き」。その言葉に嘘偽りはない。クラブ史に自分の名前を刻むためにも、タイトルへの渇望は誰よりも強かった。すでに移籍は決めていたが、昨年12月26日の天皇杯準々決勝・G大阪戦を1-3で落とすと、人目もはばからずに涙を流した。その姿には、水沼の鳥栖というクラブへの思いがあふれていた。
しかし、環境に不満はなかったが、自分自身の成長を考えるとそれはまた違った話だった。「もっと成長したい。もっと上に行きたい」。口癖のように話していた水沼にとっては、環境を変えることでより刺激を得られるという判断だったのだろう。これまでの4年間、鳥栖のために全力を尽くしてきた。そこには絶対の自負がある。しかし、新たな環境に身を置き、鳥栖に来たときと同様、またゼロから積み上げていく。恩師と言える城福監督の存在もあったが、移籍という選択は、自身の成長のために必要だった。
水沼の良さはチームのために振る舞えるところだ。どんな状況でも声出しを絶やさず、気持ちの面でチームを盛り上げる。そして、カバーリングからデコイランまで人のために走り切れる選手だ。組織を円滑に動かし、より大きな力を生むために欠かせない歯車のような存在。1+1を2ではなく、3や4にすることができる存在。優れた個がそろうFC東京を組織としてより力強く、大きなチームにするために。人のためにプレーし、振る舞える水沼は、きっとその力になれるに違いない。(杉山 文宣)