Feature 特集

J開幕。今シーズンを彩る志士たち/MF 10 大島 僚太(川崎フロンターレ)

2016/2/26 11:30


Photo: Atsushi Tokumaru

クラブ史上初の日本人“ 1 0 番”

 今年1月に行われたリオ五輪アジア最終予選。「予選突破は難しいだろう」という大方の予想を良い意味で裏切り、6大会連続の本大会出場に加えて優勝という最高の結果を出したU-23日本代表。そのチームの中心選手として戦ってきた大島だったが、個人的にこの大会で満足いく結果を出せたとは言い難い。決勝トーナメントで先発出場したのはわずかに1試合。それも大島の交代後に逆転勝利を飾った。この大会に関しては今季からチームメートとなった奈良や原川のほうが、輝きを放ったと言って差し支えない。それだけに今季はチーム内でのポジション争いはもちろん、リオ五輪本大会のメンバーに選ばれるために勝負のシーズンとなる。これまで以上に川崎Fでの活躍が求められる。そしてそんな大島に今季、クラブが用意した背番号は“10番”だった。

 チームの歴史の中で、この10番を背負ってきた選手は例外なく、ブラジル人だった。ベッチーニョ、ジュニーニョ、レナト…。Jリーグの歴史にその名を刻み、チームを勝利に導ける特別なブラジル人選手たちが着けてきた。そんな中、大島がその歴史を変えた。創立20周年、風間監督が就任して5年目、クラブハウスも大改築を行うなど、川崎Fにとって話題に事欠かないシーズンではあるが、間違いなく最も大きなトピックはこの大島の背番号変更である。何にしろ今年1月に行われた新体制発表会に訪れた観衆が最も沸いたのは10番の名がコールされたときだった。「大学に進んでいたらサッカーを続けるかどうかは分からなかった。多分、やらなかったと思う」と言うように高校卒業後はプロの道へ進むつもりもなかったという。しかし、そんな少年はチームにとってはもはやなくてはならない存在にまで成長した。“ボールを失わない”ということを大前提にして試合を進めるこのチームには足元の技術に優れる選手が多々存在する。だが、その中でも群を抜いて“うまい”のが大島だ。どんな天候でも、どんなに荒れたピッチでも、味方からのパスがどんなに雑でも、ボールを自分の懐に収められる。昨季、大島のプレーを見た湘南の高山の言葉が印象的だった。「大島はヤバイ。うま過ぎて(ボールが)取れない」と目を丸くしていた。ボランチを組むこともあるチームメートの中村は「彼は日本屈指の司令塔になることができる」と断言する。これらの言葉を聞けば19年間変わることなかったチームの伝統に大島が風穴を開けたことも納得してもらえるだろう。

 では、大島本人はどうかというと、このことを意外にも深く考えていない。「日本人初という責任とかプレッシャーというのはある数字なのかなと思う。ただ…それがどうこうというふうには思っていない」。

 10番になろうと、彼は良い意味で“いつもどおり”。10番という偉大な背番号を背負っても自然体でピッチに立つ。だから、今季もこれまでどおり、質の高いプレーを見せて観衆の目を釘付けにしてくれるだろう。 ( 竹中 玲央奈)


大島 僚太(おおしま・りょうた)
1993年1月23日生まれ、23歳。168cm/64kg。静岡県出身。静岡学園中→静岡学園高を経て、11年に川崎Fへ加入。J1通算97試合出場3得点。J3通算1試合出場。U-23日本代表。

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