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鈴木優磨、19歳。変化の契機と不動の志/EG FEATURES

2016/3/2 17:32


Photo: JLEAGUE PHOTO

「クマさんにも同じことができるのか?」

 昨年の新加入会見後も、鈴木優磨はその年の目標を問われると「10点取りたい」と話していた。しかし、その言葉を真剣に受け取る報道陣は誰一人としていなかっただろう。当然、シーズンが始まれば厳しい現実が待つ。紅白戦にも入れず、ピッチ脇でコーチとパス回しや鳥かごに励むしかなかった。
「苦しかった。あんまりそういう時期を経験したことがなかったので、どん底まで落ちた」
 下部組織のエースだった鈴木は、決して“良い子”を演じられる選手ではない。気に入らなければそれが態度に出る。ある日、トニーニョ・セレーゾ前監督が円陣を組んだとき、一人だけ体を揺らしながら、監督がいる向きとは違う方向に体を向けていた。その姿を見たとき、強化担当の吉岡宗重氏は迷うことなく叱責した。
「ポルトガル語が分からないからといって、お前、クマさんにも同じことができるのか?」
 クマさんとは鹿島ユース監督である熊谷浩二氏のこと。熱血漢で知られる青年監督は、鈴木の才能を認めながらも、甘やかされてきた部分を厳しく指導した。人によって態度を変えていた自身の甘さを痛感した鈴木は、少しずつ自分を変えていく。ただし、胸に秘めた自信だけは、いかなるときも揺るぎなかった。
「試合に出たら、絶対に自分は何かができると思っていた。だから、昨季のデビュー戦のガンバ戦で点を取れたことは、自分の中でもすごくでかい」
 昨季のJ1・2nd第10節・G大阪戦(1●2)、劣勢の中登場した鈴木は、一矢報いるヘディングを決める。J1リーグ戦初出場、初得点だった。そして、今季の開幕戦(1◯0)でも同じG大阪を相手に、DFに挟まれながらも、気持ちでねじ込むヘディングシュートで決勝点をもたらした。「オレよりうまい選手はいっぱいいる。そういう選手に何で勝つかと言ったら、自分の武器であるヘディングだったり、ゴールに向かう姿勢をもっと出していくしかない」

鹿島ユースの後輩たちのために

 これで今季はプレシーズンマッチを含めて3試合連続で決勝点を決めたことになる。市立吹田サッカースタジアムでは多くの記者に囲まれた。さっそく鹿島の切り札から、U-23日本代表の切り札へ期待する声もあった。
「周りがちやほやして来ることはまったく気にならない。自分が何をしないといけないのか、チームに何が必要なのかを考えて、単純にそれを計算して、あとは行動に移すだけだと思う。いまはそれがうまくできている」
 生まれは千葉の銚子だが、ずっと鹿島の下部組織で育ってきた。
「自分が活躍すれば、『鹿島ユース、良いな』という目に変わるし、ユースからトップに上がる人数も変わるし、クラブも『ユースから上げてみよう』という気持ちになる。バルセロナ(スペイン)もそうだけど、下部組織から選手が出てくることに悪いことは何もない」
 今季も鈴木の目標は「10点取ること」。いまは誰もがその可能性を疑っていない。 (田中 滋)

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