横浜FMのレジェンドプレーヤーが対戦相手の監督となり、眼前に立ちはだかる。井原監督が柏のコーチ時代に対戦した経験こそあるが、チームを率いる“敵将”として相対するのは初めての出来事だ。『監督・井原正巳』について問うと、中村は少し違和感を覚えているようだった。「井原さんと言えばキャプテン、キャプテンと言えば井原さん、というイメージ」。中村が桐光学園高からプロ入りした97年は、井原が日本代表の主将としてフランスW杯予選を戦っている真っ最中だった。心身ともに擦り減る激しい戦いの最中にもかかわらず「1年目の自分に優しく声をかけてくれた」。そして練習前後に入念にストレッチを行うプロの鑑ともいえる姿が目に焼き付いており、それは今日の中村を形成する礎になっている。
井原の先輩として日産自動車サッカー部から日本代表まで同じ道を歩んできた松永成立GKコーチは目を細めて言う。「自分の中で柱谷哲二と井原正巳のCBは最高のコンビ。技術、フィジカル、メンタルともに申しぶんなかった」。松永はGKコーチ一筋を明言しているが、後輩・井原は監督の道へと進んだ。そして監督初年度でのJ1昇格について、松永は「もちろん能力もあるけど、この世界は絶対的に運も必要。それを持っているということ」と静かに頷いた。
井原監督の現役時代を知る選手は少なくなった。それでも中村や松永GKコーチのようなレジェンドプレーヤーにとって、井原監督は永遠に特別な存在であり続ける。「いつか監督と選手として同じチームでやりたい」。この中村の言葉こそリスペクトの証だ。( 藤井 雅彦)