鳥栖には覚悟が足りなかった。「簡単に崩せないし、そんなにきれいなサッカーができるとは思っていなかった」と林が言うように、引く甲府に対して圧倒的にボールを保持する展開になることは戦前から予想できていた。高い位置でSBやボランチから前線にクサビが入る場合には仮にミスしても後ろに人数がそろっているぶん、大きな問題ではなかった。しかし、CBが低い位置から入れようとしてミスすればそれは大きなピンチとなる。15分過ぎから鳥栖にそういう展開が少しずつ、目につき始める。「前半のあの時間帯というのは相手を走らせて、自陣でそんなにリスクを負う必要がなかった」(林)鳥栖には我慢という意識がプレーに表れていなかった。
鳥栖をしっかりと分析した上でスキを見逃さなかった甲府の実行力は見事だった。狙いを持ったゲーム運びという点では甲府のほうが上手だ。もともと、シュート数は多くない鳥栖だが、圧倒的にボールを保持しながらもシュート数は甲府と同数の5本に終わった。シンプルに豊田を生かすようなダイナミックさが本来の鳥栖の良さでもある。現状ではまだ発展途上であり、指揮官が攻撃の決まりごとを設定している段階。定型化した攻めでは逆転までには至らなかった。(杉山 文宣)