渡邉監督は試合後の記者会見を、サポーターへの感謝の言葉から始める。この日は「お疲れさまでした」の一言のあとに、しばらく間があった。「5年前の今日、本来はユアスタで行われるべきゲームができなかった。5年経って、今日、まずは本当に何事もなかったかのように、ここで鹿島戦が開催できたことに、われわれは感謝しなければいけないと思っている」。
仙台のコーチだった11年の試合前日に、自らも東日本大震災の被災者となった監督は、試合前のミーティングでも「当たり前を当たり前と思わずに、日々暮らしていかなければいけないし、それを今日、ピッチにぶつけなければいけない」とチームに呼び掛けたという。この日スタジアムに駆け付けてくれた人たちにも、あの日以来スタジアムに来られなくなった人たちにも、メッセージを伝えた。
東日本大震災の発生から5年が経って迎えたこの一戦は、ともにホームタウンが被災して大きな被害を受けた仙台と鹿島が対戦するということでも、全国の注目を浴びた。仙台サポーターは11年に中断したJ1が4月23日に再開されたときに等々力陸上競技場で発信したメッセージと同じ「すべての仲間にありがとう。故郷を取り戻すまで俺達は負けない!」という横断幕を掲げた。そして両チームは、それぞれの思いとともに戦い、気迫のこもったプレーを繰り広げた。そして最終的に仙台が勝利。これは、昨季のJ1・2nd第6節・松本戦(3○1)以来となるホームでの約7カ月ぶりとなる白星となった。試合後の喜びもひとしおだ。
しかし、リャン・ヨンギが試合後に「今日だけできた、というのではダメなので、いかにこの意識を継続できるか」と言葉に力を込めたように、大切なのは、ひたむきなプレーや人々に寄り添う活動を継続すること。それは3月11日という日付に限らず、5年という年月に限らず、そして、仙台や鹿島といった被災地のクラブに限らず、この日本のJリーグが“TEAM AS ONE”として志すことだ。この一戦は、あらためてその重要性を教えてくれた。(板垣 晴朗)