単なる“古巣対決”という言葉で語るには難しい。現役時代に4年間、そして引退後も13年間、柏に在籍していた吉田監督にとっては、いつも以上に気持ちが入る試合だった。相手はつい3カ月前まで指揮を執ったチーム。自ら柏のアカデミーで育て上げてきた「一人や二人ではない、息子や弟のような選手たち」を分析し、倒しにいくという胸中は察するに余りある。
だが、いまの吉田監督には“オレンジの息子たち”がいる。「(吉田)達磨さんのためにも勝ちたい」と話していたのは指宿。また試合前にも「新潟の選手も僕も(直接)言わないけれど、お互いにすごく思っているのが伝わってきた。アップのときに『監督を勝たせよう』と言ってくれたヤツがいたり」(吉田監督)。
タッチライン際で、熱く戦い続ける指揮官に応えるように、選手たちは最後まで走り続けた。決して華麗ではないが、新潟らしく泥臭い、意地の同点ゴールで勝ち点1をもぎ取った。「このチームで指揮を執ること、過去にサヨナラするということ。それをこのゲームの勝利をもって成し遂げたかったけど、かなわなかった。ただ前半、選手たちが見せたファイティングスピリット、スタジアムの圧力を借りながら、最後、同点に持っていった彼らのエネルギーを、僕は本当に誇らしく思った。たくさんミスもし、同じような失点もしたけれど、それにもめげずに取り返しに行ってくれた」 吉田監督は、選手たちの健闘に胸を張った。
試合後、同点弾を決めた大野は「達磨さんは柏にいたけど、いまはアルビの監督だし、『アルビに来て良かった』と思ってもらえるプレーをしないといけない」と語った。
立ち上げから約2カ月半。試合ごとにチームは手ごたえをつかみ、吉田監督と選手の信頼関係も育っている。この先、勝利という結果が出ることで、チームも、絆も強さを増していくはずだ。(野本 桂子)