ハイプレスからの速攻―。先制弾は今季の神戸最大の強みから生まれた。2トップがプレスし、中盤が連動、最終ラインが押し上げる“コンパクトな陣形”は直近の3試合、G大阪(J1・1st第4節・2○1)、磐田(ナビスコカップ第1節・2○1)、鹿島を撃破する原動力だった。これは“奇跡の残留”と称された10年の終盤や、クラブの過去最高順位9位を成し遂げた11年に採用された戦術だ。当時の2トップを担った吉田孝行(現・神戸ヘッドコーチ)とポポをけん引役に全員が走り、戦い、いまや3年連続リーグ得点王の大久保(川崎F)も神戸のためにサイド守備に奮闘した“一体感”のシンボル的戦術。今季はネルシーニョ監督の用意周到なプランニングの下、あの感動がいま再び、神戸に蘇ってきている。その礎こそ、神戸本来の持ち味である“ハードワーク”だ。
そして、神戸のもう一つの持ち味は、味方のミスを帳消しにする献身性。昨季の神戸はマンツーマンの守備を主体としたが今季、指揮官はゾーンでの監視やマークの考え方に柔軟性を持たせ、ピッチ上の選手の判断を尊重する。選手からは「監督は『機械的にやらなくていい』と言ってくれている」との言葉が聞かれる。徳重は「いまは近くの選手を助けることができている」と試合前に語ったが、42分のシーンは象徴的。低い位置で渡邉が危険な奪われ方をしたが、伊野波が即座に奪い返し速攻の起点になった。チームは個の力が目立ったここ数年とは異なり、グループの力を付ける戦いに本格的に挑んでいる。
ただ、課題もある。上位進出を企図した12年、ポゼッション力を求めて大型補強を敢行したが結果は出せず。森岡(シロンスク・ブロツワフ)、チョン・ウヨン(重慶力帆)が移籍した今季も、攻撃が停滞したJ1・1st第1節・甲府戦(0●2)のようにビルドアップからの崩しは道半ばだ。
それでも、「いまは欲が出ている。成長のタイミングだと思う」と試合前に相馬が強調した“欲”はピッチのどの選手を見ても感じ取れる。積年の憧れである強さを求めて、神戸はらしい戦いぶりで着実に前進している。(小野 慶太)