この試合、FC東京には劇薬が必要である。その投与の決断を下すべき人は当然、城福監督しかいない。
6シーズン前までFC東京を指揮した際は、魅せて勝つというスタイルを前面に押し出した。その後、甲府を率いた際には現実的な采配を見せた。またTV解説者を務めていた際は、戦術・技術面を理論的に語り、視聴者からも好評を得ていた。監督として理想と現実の両方を体験し、さらに外から冷静にサッカーを見つめてきた。だからこそ、今回はこれまで以上に采配面で多くの引き出しが存在すると思われた。
残念ながら、現状はその期待には応えられていない。城福監督はチームに「遠慮の心」(チーム関係者)を持って入っていった。それは、かつて指導した選手と新たに指導する選手を、区別することなく起用するという平等姿勢に表れていた。ただ、毎試合メンバーを目まぐるしく変えた結果、なかなか連係やコンビネーションが積み上がらなかった。確かに厳しい連戦も選手変更の理由として挙げられるが、現状は試合の出来を見ても連係不足という負の部分が目立ってしまっている。
前任者のマッシモ・フィッカデンティ氏(現・鳥栖監督)は、守備的なスタイルで昨季年間順位4位とクラブ史上最高勝ち点を記録した。体制が変われば、サッカーも変わる。しかし、FC東京にこれまでなかった粘り強さを体現したことで、今季もその貴重な要素は継続すべきという意見が大勢を占めた。
城福監督もこれを強く意識した。その結果、彼本来の攻撃的なスタイルに針が振り切れず、かといって甲府時代のような守備姿勢でしのぐという割り切る采配もできていない。いま、毎試合ピッチで見られる、攻守に中途半端なサッカー。良く言えばバランスを意識しているのだろうが、そこにははっきりと悩める指揮官の姿勢が映し出されている。
だからこそ、ここで試されるのは城福監督の胆力である。劇的な変化を加えることで、チームに刺激を与え、蘇らせることができるか。ここ数試合と同じような指揮では、プレーの消化不良感も選手の自信も回復できない。布陣、人選など、遠慮や先入観を度外視した“骨のある選択”ができるか否か。負けられない一戦。必要なのはアンパイ采配ではなく、選手に伝わるメッセージ性のある大胆な一手だ。( 西川 結城)