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――チームとしても、リーグ戦復帰まで熊本に残って活動すると決めました。
「チーム内にも被災して家がなくなった選手もいますし、家族やおじいちゃん、おばあちゃんが熊本にいるという選手もいます。ほかの場所で練習できると言われても、『分かりました』と、すぐに(熊本の外に)飛び出して2〜3週間キャンプするとか(は難しく)、精神的にサッカーができる状況ではないという選手もいました。できるだけコンディション落としたくないという(選手の)気持ちも分かるし、そういう意見もあるかなと思っていましたけど、(チームの中には)5月中は試合するのは無理だという意見もありました。でも、みんなでアクションを起こして同じ方向を向かないといけないのではないかとも感じていたんです。僕らはサッカー選手だから、(サッカーを中断する)期間を決めて、やれることはやらなきゃということで、じゃあリーグ戦の復帰は15日だと(いうことになりました)。それを決めたときは、すでに子供たちとサッカーをやっている時期だったので、やれる人だけでいいからそれはやっていこうと。そうなると、県内だよねと」
――Jリーグからは一時移転などの提案もありました。
「ほかのクラブや地域もトレーニングを受け入れてくれると言っていただいて、それはもちろん、ありがたかったです。だけどやっぱり、選手たちの意見と熊本の状況を総合的に考えたときには、熊本で準備して、最短でも(再開するのは)5月15日だろうと(いうことになりました)」
――練習できなかった期間が長く、コンディション面での不安もあるのではないかと思います。
「僕自身はそんなに不安は感じていません。(被災後の)最初の1週間くらいは動けませんでしたけど、そこはプロだしサッカーが本業ですから、プライドや責任もあります。ただ、試合勘やゲーム体力は、数をこなさないと難しい部分はあるとは思います」
――復帰戦の相手になった千葉からは、お米や物資など、たくさんの支援が寄せられています。それに、巻選手にとっては古巣でもあります。
「物資は14トン、選手たちが集めてくれて、その後もサポーターの方が(物資を)届けてくださいました。そういう相手と試合ができるのは僕個人としてもありがたいです」
――リーグ戦への復帰が近付いてきましたが、この間やってきた支援活動をとおして、クラブ理念やクラブの存在意義を強く感じたという声もあります。選手たちの中で何か変化を感じますか?
「Jリーグも地域密着を目指していますし、地域の人たちは僕ら選手やチームを応援してくれています。だったら僕らは、そういう人たちが困ったときには応援しなければいけないし、アクションを起こさなくてはいけない。以前と比べて、そういう思いが芽生えているかなと思います。(熊本というチームは)もともとポジティブでチームワークは良いですけど、いまは、よりまとまったというか、結束が固くなったと感じます。これから厳しい試合が続いていく中で、それは必ず生きると思います。リーグ戦に復帰すれば絶対に苦しいときは来ると思いますし、ポジティブに戦えば絶対勝てるというわけではありません。そんなに甘いリーグでないことは分かっていますし、僕らは泥臭く、一生懸命やって初めてその土俵に立てるくらいの状況かもしれません。でも、そういうときにこの経験が生きて、ブレずにチームワークを持ってプレーできるはずです。本当に、そんなに簡単なことではないですけど、そこは覚悟を決めてやらなければと感じています」