局面すべてが奪いどころ
J1・1st第12節・川崎F戦(1●3)を終えた時点で神戸の勝ち点は『17』。熊本地震の影響で第7節・鳥栖戦が中止(6月2日に開催決定)され、1試合未消化にもかかわらず順位は7位。上位をうかがう好位置につけている。石津や小川ら主力選手を負傷で欠き、若手にもけが人が続出するなどネガティブな条件を抱えながらも、2年目のネルシーニョ神戸は粘り強くシーズンを戦っている。
チーム始動以降の準備期間で、最も多くトレーニングを積んだシステムは[4-3-3]だったが、いまは[4-4-2]が中心になっている。第4節・G大阪戦(2◯1)からの公式戦7戦負けなしの原動力になったのが[4-4-2]のコンパクトな守備組織であり、その安定感は特筆に値する。高い位置でのボール奪取を企図し、ゾーンとマンツーマンを使い分けてボールを奪い取る形は選手全員に浸透。一般的な守備戦術は相手のボール回しを特定のエリアに誘導しながら奪いどころを定めるが、ボールが動いた先の局面すべてを奪いどころと考えるのがネルシーニョ流。球際に強く行くことを原則とし、ボール奪取の位置が高ければ高いほど理想的だ。今季初の無失点勝利は第11節・名古屋戦(1◯0)と遅かったが、藤田は「これまでも守備に手ごたえはあった」と語っている。マークした相手に付いていくのか、マークを受けわたすのか。局面の選択と判断への自信は確かに育っている。
いまこそ組織力を高める好機
しかし、第12節・川崎F戦での敗北は、チームの足りない面がクローズアップされた。レアンドロとペドロ・ジュニオールの両外国籍選手で組む2トップによる個のコンビネーションは、対戦相手の分析を無力化する力を持つ。相手の良さを消す組織的な守備で主導権を握るのがネルシーニョ監督の戦術の肝だが、理想とする位置でボールを奪えなくてもこの二人だけで良い攻撃をけん引することができた。言い換えれば、二人が不在の中で良い攻撃をしかけるには、より守備の精度を高め、グループで守備から攻撃に転じる安定した組織力が必要だということ。川崎F戦は相手の良さを消せずに攻撃が空転し続けた試合だった。上位勢との対戦を多く残す中で、優勝争いをする川崎Fとの一戦は、組織力の大切さをあらためて教えられた試合だったとも言える。良い攻撃をするための良い守備に関して、確実に経験値を積み上げてはいるが、まだまだ質を高める必要がある。
ただ、出場機会を得た選手はルーキーを含めて辛抱強く戦えており、けが人が多いいまこそ、より組織力を高める好機と捉えたい。攻守がつねにグループとなり安定した組織の中で個を生かす。開幕前に「波のないゲームレベルを維持しないといけない」と話したネルシーニョ監督。神戸にはまだまだ強くなるポテンシャルがあり、理想を追うことが結果を出す強さにつながる。
神戸の応援大使を務めるお笑い芸人のじゅんいちダビッドソンさんでおなじみの“伸びシロ”はギャグではなく、神戸のリアルそのものだ。過酷な日程下の“総力戦”にさらなる成長への光明を見いだしたい。 (小野 慶太)