可能性を排除するどころか、むしろ助長してしまった。この試合の結果に対する指揮官の采配の責任は重い。状況を把握した上で手を施すべきだった。ハイプレスは今季の鳥栖が志向するスタイル。その実行自体は問題ではない。ただ、ドラガン・ムルジャが鳥栖の左SBの背後のスペースを突くシーンは前半から散見された。林の好セーブもあり、前半を無失点で折り返したが、処置の必要性は明らか。しかし、マッシモ・フィッカデンティ監督はハーフタイムに選手たちによりプレスを強めることを要求した。ただ、それは結果的に穴を広めることになった。
「大宮は蹴れば、一気に5、6人をはがせるような状況になっていた」と林は後半の状況について説明する。行く必要がない場面でも無闇にプレスに行ってしまう形になってしまっていた。「(プレスに)行くときと行かないときをもっと(チーム全体で)合わせないといけなかった」と林が悔やんだようにプレスに行く指示を忠実にこなそうとする選手たちの真面目さが裏目に出てしまった。ただ、そんな状況を目の当たりにしてもそれを続行させたフィッカデンティ監督の責任もある。「(大宮は蹴れば、一気に5、6人をはがせるような状況になっていたので)それをやり続ければいつか事故を起こせると思いながらやっていたのではないか」。林は大宮側の心理をそう読んだが、フィッカデンティ監督の采配はその事故の可能性を高める形でしかなかった。
フィッカデンティ監督は「同じような負け方をした」と嘆くが、偶然だけで同じような敗戦はここまで続かない。監督就任が遅れ、編成に関われなかったことから選手の質に原因を求めたくなる点については同情の余地はある。ただ、補強は7月までは叶わない。現状で結果を出すためにも指揮官自身が選手たちに歩み寄るなどの柔軟性も必要なはずだ。無いものねだりの状況でいまの守備のやり方を続けていても同じことの繰り返しになるだけだ。それはいまの鳥栖が結果で証明してしまっている。 (杉山 文宣)