ここまでわずか1敗。例年であれば負けていたシチュエーションで勝ち点を拾っている川崎Fを称して「今季は違う」という言葉がよく聞こえるが、大久保嘉人はそれを疎ましく思っているようでもある。「まだまだ今季は終わってないから。気が早いよ」。そう口にしていた。確かに、クラブの歴史を見ればそれは明らかだ。
“シルバーコレクター”という不名誉な称号が最もリーグで当てはまるのがこのチームである。攻撃的でエンターテインメント性のあるサッカーを展開し、代表選手も輩出してきたが、タイトルは一つもない。“ここで勝てば優勝が近付く”、“ここで勝てば優勝争いに踏みとどまることができる”という状況では、いつも星を落としてきた。特に、09年は降格が決まっていた大分に敗れ、14年には終盤に残留を争っていた甲府や清水に敗れたり、と下位チームから勝ち点を奪えないということが多く、異様なまでの勝負弱さがクラブの“体質”になってしまっていた。もはや大一番での敗戦に驚きを感じない者が多数派を占めるのも事実だ。
「こういうチームだから」
こんな言葉が選手から、取材現場からも上がってしまうほどだった。
だが、もちろんいつまでもそのままで居続けるわけにはいかない。先にも述べたとおり、例年なら負けてもおかしくない試合で勝ち点を拾えている今季は、クラブの持つ悪しき体質から脱皮をするまたとないチャンスなのだ。そして、これまで悪夢を見続けてきた“大一番”はこのラスト4試合、すべてである。
この状況をモノにできるのか、できないのか。いつもどおりの川崎Fで終わるのか、ここで進化を遂げるのか。クラブの地位と未来が懸かり、本当の意味で“強い”クラブになるための勝負の1カ月が幕を開ける。(竹中玲央奈)