5月24日のACLラウンド16第2戦・上海上港戦。前田はGKとの1対1の場面を外した。ポーカーフェイスを崩すことなく会場をあとにしたが、心の中は煮えくり返っていた。「これがいまの僕の実力、そう割り切るしかないのかもしれない。でもこの悔しさは絶対に忘れない。今日はそれを晴らさないといけなかった」。
果たして、前田はG大阪戦、自分の一撃で試合を決めてみせた。咆哮し、試合後に見せた笑顔と少しの安堵の表情。今日は外せないと思い臨んだ背水の試合。そこで示した結果が、再び彼の視線を上向きにさせる。
前田の活躍は、この試合の青赤の意地を象徴するエピソードになった。「FC東京の気持ちが試合を支配していた」(長谷川監督)。敵将にこう言わしめるほどの熱量が、90分間途切れることはなかった。
上海で成し遂げられなかった無失点。G大阪戦の終盤、1-0のリードのまま逃げ切りに入った場面は「みんながあの試合の最後が頭をよぎったと思う」と高橋。そこで見られたのは、冷静な判断。しっかりマイボールにしながら効率的に時計の針を進めた。「今日は下がらずにできたのは、間違いなく上海での悔しさが生きたから」。ほかの選手と同じように高橋も勝利の余韻をかみ締めながら話したが、最後に一言。「ただ、あの負けとこの勝利でプラスマイナスゼロにはならない。あの試合での損失は計り知れないから」。
簡単には拭い去れない。染み付いた悔恨は、なかなか彼らの心から解き放たれないだろう。それでも青赤にはこの勝利が不可欠だった。「あの上海戦がどれだけ悔しかったか。その思いを見せないといけない試合だった」。ベテランの羽生が代弁した気持ちが、このゲームのすべてを物語っていた。 (西川結城)