さすがのプロモーション
ひさびさのトーナメント大会になったキリンカップだが、欧州のシーズンが終わった直後である。しかも、今年はフランスでEUROが同月に開催される。参加国は、欧州で実質“ベスト32”に入ることができなかったナショナルチームという選択肢から選ばれた。中南米に目を移しても、米国でコパ・アメリカが開催されるため、強豪国を招待することもできない。僕自身、欧州のサッカー事情に疎いせいもあるが、3チームも参加しているにもかかわらず、レスターのGKカスパー・シュマイケル(デンマーク)を除いて、知名度の高い選手はほとんどいない。欧州組が半分を占める日本代表にとって、ブルガリア代表は、彼らの想定内のプレーをするチームという認識を持っていてもおかしくない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は日本代表のメンバー発表会見で、「日本は過去、ブルガリアと対戦して一度も勝ったことがない」と強調をしていたが、裏を返せば、いや、結果を見れば、現状のブルガリア代表をしっかり分析をした上での試合のプロモーションだったことが分かる。さすがである。
これまでになかったゴール
とはいえ、ナショナルマッチで7得点は溜飲が下がる。しかも本田圭佑不在の中での大量得点である。香川真司が水を得た魚のように攻守に躍動していた。前線からの連動したプレスは、試合開始直後からブルガリアを機能不全に陥れた。柏木陽介のクロスにディフェンスラインの裏に飛び出た岡崎慎司の先制点は、これまであまり見ることができなかったゴールシーンである。岡崎を筆頭に、前線の選手が裏に飛び出す意識を持っていても、これまでの日本代表は早いタイミングでピンポイントクロスが出なかった。両サイドのスペースも効率よく生かし、ひさびさにSBの存在感を、たっぷり感じさせてくれた。今年の流行語大賞は、「アモーレ」で間違いない。
ハリルの秘蔵っ子、宇佐美貴史が技ありのゴールを決め、浅野拓磨が脚力を生かし、サイドから切れ込みPKを獲得した。バランスが崩れてもプレーをやり切る浅野スタイルは、日本代表の攻撃を、さらに進化させるはずだ。ひさびさに代表のピッチに立った川島永嗣は、代表でのブランクを感じさせないパフォーマンスを見せた。香川が相手と激しく交錯をして腰を強打、途中交代となったのが懸念されるが、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦は、本田、香川抜きの代表も見てみたい、そう思わせる充実ぶりだった。(六川則夫)