Photos: Atsushi Tokumaru
「PKだったので入ると思っていました」(鈴木孝)。
試合後のヒーローインタビューはサポーターも選手も熱くなる場面である。PKを蹴ったときの心境はどうだったか̶̶。そう問われたエースのクールな答えがまた彼らしかった。鈴木孝はどんなときもテンションが一定していて緊張とは無縁。相手のちょっとした誘導尋問に乗らず、素で返すことも多い。そういうマイペース人間だからこそ、ストライカーという役割もしっかり務まるのだろう。
鈴木孝は徳島戦のPKが7得点目で、チームメートの中島らと並ぶJ2の得点ランク3位タイに浮上した。そのうち2点はPKだが、いずれも彼が自ら得たモノだ。この試合のPKも五分五分の状況から良いタイミングで体を反転させ「自分の懐にスペースを作れた」ことが、相手のファウルにつながった。
2トップにボールが収まらなければ、町田の縦に速い攻撃は機能しない。得点力はもちろんだが、相手と競りながらボールを収められるところにも鈴木孝の価値がある。身体的なたくましさ、バランスも持ち合わせているが、動き出しやDFとの駆け引きにその秘訣がある。彼も「(DFやMFが)ちょっと顔を上げたときに、相手の逆を突いて足元だったり裏だったりに動けていれば出しやすい。『フリーだよ』という形を作っておけばキープもラク」と自らの動き出しとキープの因果関係について説明する。
メンタル、駆け引きを兼ね備えた本物のストライカーは日本サッカーを見回しても決して多くない。しかし、鈴木孝は間違いなく“本物”だ。(大島和人)