昨季序盤、栗原と榎本はほぼ同じタイミングで定位置を失った。栗原はファビオに、榎本は飯倉にポジションを譲る。こうして我慢と忍耐の日々が始まった。
言わずもがな、横浜FMの売りは“堅守”だ。失点は毎年のようにリーグ上位の少なさで、昨季はリーグタイトルを手にした広島に次ぐ2位の数字(32失点)だった。ファビオと飯倉の能力の高さに加え、チーム全体の守備意識も高い。一度ポジションを失った彼らにはなかなかチャンスが訪れない。
風向きが変わったのはつい最近の話だ。レギュラー選手の負傷離脱をきっかけに、栗原と榎本が意地を見せる。今季は一度も完封勝利を手にしていなかったが、現在リーグ戦2試合連続完封勝利中と本来の姿を取り戻した。5日のナビスコカップ第7節・仙台戦でも2-0と完封勝利。両者は「自分にとってこれ以上の仕事はない」と口をそろえて胸を張った。
中澤を含めたゴール前のトリオが、チーム復調の原動力だ。栗原と榎本は02年にユースから昇格し、同年に中澤が東京Vから加入した。3選手は同期で、海外移籍を挟んだ中村を除くと15年目のチーム最古参だ。榎本はCBコンビについて「最強で最高」と惜しげもなく言う。栗原は「お互いのプレーエリアを分かっているし、体に染み付いているものがある」と阿吽の呼吸を強調。そして中澤が「長いこと一緒にやってきたのであらためて何か言う必要はない」とまとめた。
栗原はこの試合に出場するとJ1通算300試合となる。その多くの試合で中澤(518試合目)や榎本(219試合目)と共演してきた。酸いも甘いも経験し、共有してきた。それが現在の信頼関係を築き上げた。
今節も横浜FMは必死に守るだろう。その中心にいるのが栗原と榎本、そして中澤である。彼らがトリコロールのアイデンティティーを体現する。(藤井雅彦)