09年から2年連続でJ1得点王に輝き、日本を代表するストライカーに上り詰めた前田遼一。昨季からはFC東京に活躍の場を移したが、磐田時代同様フォア・ザ・チームのプレーを続けている。
いまでこそセンターFWの印象が強いが、磐田入団当初は中盤もこなすタイプだった。技術は高いレベルにあったが、不用意なボールロストも多かった。00年初頭の磐田といえば黄金時代を謳歌しており、ピッチに立つ面々は漏れなく日本代表クラスだった。彼らにしてみれば、あのころの前田は“ただうまいだけ”の選手だった。そんな荒削りな原石は、後にJ史上最強と謳われるチームの中で少しずつ磨かれていくことになる。「ゴンちゃん(中山雅史)、高原(直泰)、グラウ、俺、(藤田)俊哉、福西(崇史)。ストライカーとしての立ち振る舞いをみんなで教えた」(名波監督)。
錚々たる面々から薫陶を受け、時には厳しく叱責されたこともあっただろう。それでも、前田は高みを目指し続けた。「そして、アイツはそれに応えた。得点王になるまでの積み上げとかね」と、名波監督はどこかうれしそうに話した。
いまは名波監督も前田に最大級の賛辞を送る。「スピードがないのを自分で分かっていて、入っていく角度とか動きの質は随分追求していたと思う。あとは右足、左足、頭と満遍なく点を取れるのが彼のストロングポイント」
あと1点と迫ったJ1通算150得点のメモリアルゴールを古巣相手に決めるとすれば、本人はもちろん磐田サポーターにとっても感慨深いものがあるだろう。しかし、今節磐田が欲しいのは勝ち点3。冷静にゴールを生み出す前田を止めなければ、勝利は見えてこない。(青木務)