08年の加入以来、兵藤はどの監督にも常に重宝されてきた。かつて木村和司元・監督は「絶対に外せない選手になった」と最大限の賛辞を送り、その11年には34試合フルタイム出場を達成した。サイドハーフやボランチなど主戦場を変えたとしても、チームに必要不可欠な存在として価値を高めてきた選手である。
立場が一変したのはエリク・モンバエルツ監督が就任した昨季のこと。リーグ戦28試合に出場したが、先発は半分の14試合にとどまり、1,338分という出場時間は同じ28試合に出場したルーキーイヤーよりも少ない(08年は1,954分)。今季に至っては、先発出場は開幕戦の仙台戦(0○1)の1試合のみ。サイドハーフではスピードが足りず、ボランチとしては喜田や中町、あるいはパク・ジョンスの後塵を拝してきた。
それが中村の負傷欠場という形で、トップ下でひさびさの先発機会を迎えた。この状況に本人は「1stステージの最初と最後か」と苦笑いだが、「チャンスなのは間違いない」とすぐに気を引き締めた。チームにとって2ndステージにはずみをつけたい一戦だが、兵藤にしてみれば今季はもちろんのこと、今後のサッカー人生を左右する90分になるかもしれない。
求められるプレーは“らしさ”だ。モンバエルツ監督は兵藤のトップ下起用について「彼のモビリティーはチームのプラスになる」と話す。ボランチとして後方支援する形になる中町は「ヒョウ(兵藤)は潤滑油。相手にとってジャブになるプレーができる」と歓迎した。誰よりも本人が一番分かっている。「自分が間に入ってクッション的にボールを受けたい」(兵藤)。モビリティー、潤滑油、そしてクッション。それらすべてが背番号7の特徴を正しく形容している。
主演男優賞ではなく助演男優賞を狙え。中村俊輔になる必要はない。兵藤は兵藤のままでいい。 (藤井 雅彦)