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タフなグループを戦い抜く、世界レベルの武器
リオ五輪で最もタフなグループに振り分けられた抽選会。直後に視察に訪れた市立吹田サッカースタジアムで手倉森誠監督は、選手選考の第一条件を開口一番、こう言い切った。「まず、タフでなければいけない」。
50mを5秒台で走り切る快足に注目が集まりがちな藤春廣輝だが、この男の真価はスピードだけにとどまらない。G大阪では1、2の持久力を誇る丹羽が証言する。「ハル(藤春)は口で『疲れた』と言っていても結局最後まで走り切る。あのタフさはすごい」。
抜群のスピードでアップダウンを繰り返し、真夏の過酷な環境で消耗する展開でも、涼しげな顔でオーバーラップできる藤春のオーバーエイジ枠選出は、開催地の気候条件を考えれば必然だった。初戦のナイジェリア戦、第2戦のコロンビア戦と赤道直下のマナウスでの2試合で問われるのは走力と、暑さでも落ちないインテンシティー。「蒸し暑くてキツい環境なら、相手が先に疲れるので僕にはやりやすい」(藤春)。オーバーエイジ枠に内定後、マナウスとサルバドールの気候を聞かされたG大阪の背番号4は、常夏の地で挑む戦いについて、気後れどころか、むしろ歓迎の体だった。昨年26歳で日本代表に初選出されるまで、年代別代表にもまったく縁がなかった、いわば“雑草”だが、ガツガツした向上心どころか、人の良ささえ感じさせる好青年である。オーバーエイジの打診を受けたときも「予選も戦っていないし、いきなり本大会に行っていいのか」と逡巡したという。しかし、控えめな男の背中を押したのが、日本代表の一員として目指すW杯ロシア大会への強い思いだった。
「五輪を戦うということは世界での経験につながる」(藤春)。もっとも、五輪を自身のキャリアアップのための踏み台にするつもりは毛頭ない。「プレッシャーもあるし、責任は重大」とオーバーエイジ枠としての重責は自覚済みだ。「攻撃参加が、世界相手にどれだけ通じるか楽しみ」(藤春)。本大会での躍進を目指す手倉森ジャパンが、すでに手にしている世界レベルの武器。それが藤春の走力だ。(下薗 昌記)