本人の気持ちの変化で一気に進展
UAEのアル・アインが2日、鹿島のMFカイオの獲得を発表した。
1stステージを制覇し、2ndステージに向かおうとする中での突然の移籍だった。アグレッシブに戦うだけでなく、勝負強さも備えてきたチームが、さらなる高みを目指す中で起きた主力の引き抜き。「育てた選手がやっと主力になったところで引き抜かれてしまう。これだとなかなかチームは強くなれない」と、強化部門の責任者である鈴木満常務取締役は頭を抱えた。
UAEのアル・アインからの正式オファーを初めて受けたとき、カイオ自身は「行く気はない」と断言し、「頭の中には鹿島しかない」と答えていた。
しかし、その後複数の仲介人が、あたかもカイオの正式な代理人であるかのようにアル・アインに売り込み情報は錯そう。1st最終節・福岡戦(2○0)終了直後、現地メディアではカイオがすでにUAE入りしているなどと報じられるほど、若き才能の周りを有象無象が暗躍した。
あまりに多くの人間が仲介料を目当てに顔を突っ込んでくるため、らちが明かず、クラブ間同士で直接やり取りすることとなったことで、アル・アインは再度オファーを提示してきた。
鹿島はカイオに高い将来性を見いだしており、かなり高額の移籍金を設定した。しかし、アル・アインはそれをクリアする額を提示。この時点で争点は、カイオの意思次第となった。
6月29日、30日と2日続けてカイオの父親も交えて会談。Jリーグからは多くのブラジル人選手が高額の年俸に魅了され中東に渡ったが、元鹿島のダヴィを筆頭に再びJリーグに戻ってきた選手は多い。ほかにも生活環境、リーグの体制など、日本との違いを説明したが、カイオが「移籍させてほしい」とオファーに応じる姿勢を示したため、移籍交渉は一気に進展。カイオはその日の夜UAEに向かい、7月1日の朝に鹿島の選手たちに状況が伝えられる、という急転直下の移籍劇だった。
生え抜き選手を失う辛さ
鈴木常務は「倍の額をもらっても出す気はなかった」と、移籍させるつもりはまったくなかったことを吐露。「俺の仕事は、移籍金でもうけることではない。チームを勝たせることだから」とカイオを説得できなかったことを、心の底から悔やんでいた。必死に説得に当たったが、家族だけでなく親類縁者の多くがカイオの収入を頼りに生活しており、その意思は固かった。
カイオの抜けた穴は大きい。移籍によって、クラブはかなり高額の移籍金を手にできるが、それで簡単に埋め合わせできるものではない。
特にカイオの場合、即戦力として獲得したのではなく、高卒からじっくり育ててきた生え抜きの一人。だからこそ、その穴は余計に大きい。
クラブは、移籍マーケットが締まる7月31日まで新戦力を探すようだが、「頭数をそろえるだけの補強はしたくない」(鈴木常務)と話す。しかし、いまのままではアタッカーの数が減り、縦の速さに特長を持つ選手がいない。戦いの幅を考えると、カイオの後釜を見付けられなければ、2ndステージ以降の戦いに大きな影を落としそうだ。(田中 滋)