Photo: Norio Rokukawa
「正直、楽しみしかないですよ」
そう言って不敵に笑ったのは、Jリーグでも今季ワンランク上のプレーを見せるようになった守備の要、DF植田直通だった。鹿島で試合に出られずに苦しんでいた時期は、代表に来てもどこか余裕のない様子もあったのだが、いまはそうした気配が微塵もない。かつて手倉森誠監督は「彼らに自信を付けさせてあげたい」と言っていたのだが、各選手からそうした空気を感じることができるようになった。
MF大島僚太もその一人だろう。自他ともに認める内にこもるタイプで、別に本質が変わったわけではないと思うが、人当たりはだいぶ変わった。この合宿でも、記者の的外れな質問に対して毅然と疑問を呈していて、個人的には頼もしさを感じた。彼もまた今季のJリーグで一皮むけたプレーを見せている一人である。
このチームについて、「みんなマイペースなのがいいんですよ」と笑っていたのは、主将の遠藤航(※誰よりもマイペース)である。全体に物静かなのは同じだが、空気のディテールは明らかに変わった。かつての臆病さや迷いは消えて、真っ直ぐで凜とした雰囲気がチームに漂うようになった。最終予選で感じた熱にあふれた勢いとはまた違う、確信の空気である。
手倉森監督は「チャレンジャーですから」と笑っていた。この指揮官はいつも笑顔を浮かべることで若いチームを支えてきた。五輪本番に向けて周到に策を巡らしているのは間違いないのだが、そういうピリピリ感は外に出さない。そういう強さのある人だ。
チーム結成から2年半。「弱い」と言われ、実際に結果もまるで出なかったチームは、明朗な指揮官の下で確かな成長を遂げた。歴代五輪代表を思い出してみても、“伸び幅”に関しては一番かもしれない。
リオ五輪は各選手が積み上げてきた成長の成果を問う場となる。勝敗は時の運だが、可能性がないとはまったく思わない。このチームを追いかけてきた一人の記者として思うのは、この一言に集約される。
「正直、楽しみしかない」(川端 暁彦)