Feature 特集

青赤の苦悩/FC東京緊急特集

2016/7/27 11:30


攻撃と守備のバランスに最適解を導き出せず

 笑顔の少ない、約半年間だった。時が経つにつれて、城福監督の視線は下に落ち、表情は硬くなっていく。こちらも心配してしまうような、暗い印象。そのイメージは、ロッカールーム内でも徐々に広がっていった。
 今季序盤から、チームのベースを作れずにいた。毎試合、起用選手を目まぐるしく変えていく。システムは概ね[4-4-2]がベースとなったが、選手間の連係面はなかなか向上しない日々が続いた。前の試合で先発だった選手が、翌週にはベンチ外へ。そんなドラスティックな起用法は、多くの選手からも不可解に取られ、負けが続いたある時期には、見兼ねた強化部が監督に起用の改善を要求したこともあった。
 6シーズンぶりに帰還したクラブ。かつて指導した選手に加え、肝いりで獲得した新戦力もいた。その中で、監督は選手たちに公平性をあまりにも強調しようとした。お気に入りの選手と、その他。そんな見られ方をされないよう、選手をどんどん入れ替えていく。時にそれは、過度なマネジメントに映った。チームの骨子作りが遅れてしまった理由である。
 昨季までチームが見せていた堅い守備を踏襲するべく、攻撃に偏向しないスタイルを目指した。理想として描いていたのは、細かい守備戦術は前体制から変えつつ、本来理想とするボールポゼッションを中心にした攻撃的な形に緩やかに移行していく姿である。
 しかし、それはまさに絵に描いた餅となってしまう。攻撃も守備も、どちらも中途半端な姿勢とプレーが続き、選手たちからも「立ち返るところがいまはない」という声が出てくるほど。安定しない成績が続き、攻撃と守備のバランスに最適解を導き出せずにいた。
 そして、極めつけは5月下旬からの衝撃的な負け方の数々だった。ACLラウンド16第2戦で上海上港(中国)に喫した後半ロスタイムの被弾を皮切りに、リーグ戦でも1st第13節・浦和戦(2●3)では2点差をひっくり返され、2nd第1節・鳥栖戦(2●3)や2nd第3節・福岡戦(1●2)でも上海と同じく後半ロスタイムでの失点により逆転負けを喫した。
 2月9日のACLプレーオフから公式戦を戦ってきたため、体力面での失速は懸念されていた。さらに、今回城福監督とともにチームを去った池田誠剛フィジカルコーチの抑え気味の調整法には、チーム内からも賛否両論が挙がっていた。データにも出ているように、ここに来て終盤の失点からの敗戦が急増し、懸念材料が現実となってしまったのである。
 勝利をあきらめないという言葉は内外で発していたものの、城福監督が見せていた余裕のなさは、選手にも蔓延してしまった。「選手は踏ん張ろうとしている。あとは監督がこういうときだからこそガクッと落ち込むのではなく、胸を張ってほしい…」。多くのスタッフからも同じような言葉が漏れてきた。
 そんな思いも虚しく、城福監督は最後まで笑顔を見せることなくクラブを去った。あまりにも不器用な男の、寂しい終わり方。4月、中国・南京で会心の勝利後にわれわれに見せた、強さと明るさに満ちた表情。あの輝かしさを、もう一度目にすることはなかった。(西川 結城)

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