普段は穏やかな雰囲気すら漂う水戸との対戦だが、この日ばかりは独特の張り詰めた空気がアルウィンに立ち込めていた。三島のホーム戦デビュー、対戦相手はわずか2週間前まで所属していた古巣の水戸。さすがに水戸サポーターも心中穏やかではなく、試合前の選手紹介では三島の名が告げられた瞬間、大ブーイングが送られた。
キックオフ前から熱戦となることが定められていた試合は、想定どおりの展開のまま時計の針が進んでいく。スタンドまで骨の軋む音が聞こえてきそうなほどの激しい接触プレーも見られ、選手が痛みで顔を歪めながらピッチへと倒れ込むたびに両サポーターも沸き返る。その雰囲気に集中を切らす選手がいるはずもなく、まさしく意地と意地のぶつかり合い。試合はスコアが動かないまま終盤を迎える。
そして82分、ついに三島が投入されると場内の熱は最高潮に。新たなユニフォームに袖を通した三島はゴールという結果でホームのサポーターに認めてもらうべく、短い出場時間ながら奮闘。水戸のゴールネットを揺らそうと前を向き、89分にビッグチャンスを迎える。しかし、右足で放ったシュートはGK笠原の好セーブに阻まれ得点ならず。そして、スコアレスのまま試合終了。振り返れば、エースストライカーを引き抜かれた水戸の意地が、勝利を欲する松本をほんの少しだけ上回ったように感じた。(多岐 太宿)